社説/金融政策の転機(上)米欧「軟着陸」へ利下げ時期注視

(2023/12/12 05:00)

日米欧が金融政策の転機を迎えようとしている。2024年に米欧が金融引き締めから利下げに転じる一方、日本は金融政策を正常化し、17年ぶりの利上げを決断するかが焦点になる。物価が沈静化してきた米欧は政策転換時期を慎重に探り、経済を軟着陸させてほしい。日本は米欧との金利差縮小で円高基調が想定されるほか、日本企業は超低金利のぬるま湯から「金利のある世界」に戻ることを前提に収益構造の強化を進めたい。

米連邦準備制度理事会(FRB)は12、13の両日、欧州中央銀行(ECB)は14日に金融政策を決定する会合を開く。米欧とも今回の会合では政策金利を据え置く見通しだ。懸案の消費者物価指数が落ち着き、米国は10月に前年同月比3・2%、ユーロ圏は11月に同2・4%の上昇にとどまった。米FRBは3会合連続、ECBは2会合連続の据え置きとなる見通しで、今後の焦点は景気に配慮した利下げへの政策転換時期に移る。

米国の7―9月期の実質成長率はプラス5・2%(年率換算)と好調で、11月の雇用統計も非農業部門の就業者数が19・9万人増と、前月の15万人増を大きく上回った。早期の利下げ観測は後退したが、米国経済は徐々に減速することが想定される。米FRBは前回会合で0・25%幅で年2回の利下げシナリオを描いていた。今回の会合で示される経済見通しを注視したい。

他方、ユーロ圏の7―9月期の実質成長率は年率換算でマイナス0・5%と3四半期ぶりにマイナス成長に転じた。市場では、物価上昇率が想定以上に低下しており、24年春から景気配慮の利下げに動くとの見方が多い。米FRBもECBも利下げ観測を「時期尚早」と慎重姿勢を崩さないが、転機を迎えつつあることは間違いない。米欧には景気配慮の政策運営を求めたい。

日銀の会合は米欧に続く18、19の両日に開かれる。大規模金融緩和を見直すと受け止められる正副総裁の発言が相次ぎ、7日の為替相場は1ドル=141円台まで円高が進んだ。金融政策の正常化に向けた地ならしなのか、総裁会見で見極めたい。

(2023/12/12 05:00)

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