社説/中小の賃上げ焦点 地方版「政労使会議」で後押しを

(2023/12/21 05:00)

デフレ脱却に向け、2024年春闘は中小企業の賃上げが最大の焦点になる。だが東京商工リサーチが20日発表した調査では、23年春闘を「超えそう」な企業は1割にとどまる。政府は年明けに各都道府県で地方版の「政労使会議」を開き、中小の賃上げ機運を醸成するという。労務費の価格転嫁を促す公正取引委員会の指針の順守を会議で徹底し、中小の賃上げ原資を確保することが求められる。

岸田文雄政権は24年春闘で23年を上回る賃上げを目指し、連合は賃上げ率5%以上の要求を掲げる。経団連も23年を超える賃上げに意欲を示す。だが賃上げの裾野が全従業員数の7割を占める中小企業に波及しなければ脱デフレはおぼつかない。

東京商工リサーチは4581社を調査し、うち4128社が資本金1億円未満の中小企業。全体の82・9%が24年春闘で賃上げを予定するものの、23年を「超えそう」な企業は11・6%にとどまり、「23年と同じ程度になりそう」が51・5%、「23年を下回りそう」「賃上げできそうにない」が合わせて約37%に達する。賃上げ原資を確保するには「既存製品・サービスの値上げ(価格転嫁など)」が必要と65・2%の企業が答えた。

経済産業省・中小企業庁が行った価格転嫁に関する9月調査では、労務費の転嫁率は36・7%にとどまった。公取委が策定した労務費の価格転嫁指針は、受発注企業に求められる12の行動指針を提示し、公正な競争を阻害する恐れがある場合は独占禁止法などに基づき厳正に対処するとした。発注企業による同指針の順守が強く求められる。

地方版の政労使会議は、厚生労働省の各都道府県の労働局や自治体、地方の経済界・労働団体で構成し、24年1―2月の開催を想定するという。公取委の指針の順守や24年度に講じる賃上げ促進税制の拡充策を訴求し、賃上げ機運を醸成したい。

財務・厚労相による20日の閣僚折衝では、前回改定を上回る医療・介護従事者の賃上げで決着した。こうした流れを産業界、とりわけ中小に波及させ脱デフレの糸口を見いだしたい。

(2023/12/21 05:00)

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