[ 科学技術・大学 ]

研究所探訪(12)東急建設技術研究所−耐震性能・杭工事“見える化”

(2016/12/20 05:00)

  • 建築材料の電磁波に対する特性を調べられる設備

東急建設は首都圏を中心に土木・建築工事を請け負い、特に鉄道関連の建設技術で多くの特許を保有する。研究開発拠点となる技術研究所は、構造物の耐震性や、建築材料の電磁波に対する遮断や吸収の特性を調べられる大型設備を所有。建設の基盤技術から事業に直結する応用技術まで幅広いテーマに取り組む。

製造業と異なり、建設業は発注者の注文に対し自社の得意な施工技術を売り込み、受注に結びつける必要がある。こうした強みを生かし、土木構造物の設計・施工で他社と差別化を図っている。

建物の免震装置や杭(くい)工事に関わる偽装問題など、建設業界の信頼が揺らぐ中、同社では現在、原因の一つである施工のブラックボックス化を改めようと“見える化”を進める。情報通信技術(ICT)を応用し、建築の構工法技術の改良や鉄道耐震補強技術を開発している。

近年の取り組みとして富士電機と共同で、微小電気機械システム(MEMS)型感振センサーを建物に数台設置し、地震の揺れと建物の健全性を判定するシステムを開発、数個の物件で運用中だ。

地震が起きるとすぐに震度や建築物の破壊の度合いなどがモニターなどに表示される。データを蓄積することで、改築や補強工事の適切な時期を建物の管理者に提案できる。

また建物の運用での消費エネルギーと、風力や太陽光などで作るエネルギーとの収支をゼロにする「ゼロエネルギービル(ZEB)」の取り組みも実施中だ。

沼上清技術研究所長は、「築24年の建物をZEB化するため改修工事中で、完成後は一般的な事務所用建物のエネルギー消費量と比べ8割以上削減できる」と自信をみせる。

独自の建設基盤技術を作り、改良を重ね活用することで、利益と実績につながる技術にする。そのためには人材育成が不可欠。「研究所での研究だけではなく現場の設計や施工など多くの業務を経験させる」(沼上所長)と10年先を見据えた研究体制を構築する。

(冨井哲雄)

▽所在地=相模原市中央区田名3062の1▽電話=042・763・9511▽主要研究テーマ=構工法技術、コンクリート技術、構造耐震補強、環境保全技術、室内環境の快適化など▽研究者数=50人

(火曜日に掲載)

(2016/12/20 05:00)

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