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[ 科学技術・大学 ]
(2017/3/21 05:00)
広島大学大学院先端物質科学研究科の広田隆一助教と黒田章夫教授らは、遺伝子を組み換えた微生物が誤って実験室の外へ漏れ出た際に、拡散を防ぐ新技術を開発した。自然界にほとんど存在しないリン化合物「亜リン酸」に着目。亜リン酸がないと生きられない大腸菌を作り、亜リン酸を含まない培地で培養した。その結果、2週間後には菌がほぼ検出されなくなり、拡散防止効果を実証した。
亜リン酸なしで生きられる変異体が現れないか確かめるため、この大腸菌約5兆匹を亜リン酸のない培地で3週間培養。その結果、変異体は1匹も出現しなかった。遺伝子を組み換えてバイオ燃料の生産能力を高めた微細藻類を、安全に培養する技術などへの応用を見込む。成果は20日、英電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
遺伝子組み換え微生物に自然界では生きられない性質を事前に与え、万一の漏出に備える手法は「生物学的封じ込め」と呼ばれる。特定のビタミンやアミノ酸などの栄養源がないと生きられないようにする技術が既にあるが、封じ込めから逃れる変異体が現れやすいなどの課題があった。
研究チームは、ほとんどの生物が利用できない亜リン酸を利用できる特殊な微生物の機能を応用。生物にとって必須の栄養素であるリンの代謝系を遺伝的に改変し、リン源として亜リン酸だけを利用する性質を大腸菌に持たせることに成功した。
(2017/3/21 05:00)