[ オピニオン ]
(2017/6/21 05:00)
中国の企業が日本に開発・製造拠点を開設し、モノづくりを学ぼうとする動きがある。「安かろう、悪かろう」では中国でも売れなくなったためだ。ただ彼らが本気で日本流を身につければ、日本の中小企業は負けてしまう懸念もある。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などを積極的に取り入れ、新たな付加価値を創造したい。
広東省の家電メーカーは大阪に研究拠点を設置し、日本向け電子レンジの設計・開発に着手した。上海のブラシメーカーも工場を開設し、初の自社ブランド歯ブラシの生産を始めた。
なぜ人件費の高い日本に、わざわざ開発・生産拠点を置くのか。ブラシメーカーの経営者は「江蘇省揚州市や広東省広州市に集積する歯ブラシメーカーの間で価格競争が起きた。その結果、高価格だが品質の高い製品を作る企業が生き残り、低価格・低品質な企業は淘汰(とうた)された」と理由を打ち明ける。
中国は生活レベルが向上し、消費者は少々高くても安全・安心で高品質な製品を求める。安い人件費を求めて新興国に進出しても、品質は向上せず、やがて人件費が上がるという限界に経営者たちも気付いた。「メード・イン・ジャパン」の称号も手に入れられる。
「3年前に日本でモノを作ると言ったら、おかしいと皆から笑われた。しかし今は、賢いとたたえられる」とこの経営者は話す。模倣品への規制も強化され、自らがデザインしたブランドで“真のメーカー”を目指す経営者も増え、利益を追求する商人から、技術を極める職人への意識改革も進んでいる。
こうした変化に対し、日本の中小企業は手をこまねいていてはいけない。立ち止まっていては、モノづくりの力をつけた中国勢に先を越されかねない。
IoTやAIなどの次世代技術を生産設備や開発設計分野に取り入れ、イノベーションを生み出すべきだ。次世代技術の導入だけが正解ではないかもしれないが、今こそ日本の中小企業は危機感を持ち、一歩前に進むべきである。
(2017/6/21 05:00)