[ オピニオン ]
(2017/12/5 05:00)
メガバンクが相次いで店舗運営の改革を打ち出している。ただ、全国主要都市に展開する店舗網の再編は、利用者に大きな影響を与える可能性がある。銀行業の公共性の高さを考えて慎重に進めるべきだ。
三菱東京UFJ銀行は国内516店舗のうち、70―100店舗を「機械化店舗」に転換する計画を打ち出した。テレビ電話や新型ATMを導入し、少人数で運営できる体制に変える。三井住友銀行は全国430店を、ペーパレス化技術などを導入した「次世代店舗」に切り替えるほか、個人客に特化した店舗展開も始めた。
みずほフィナンシャルグループは銀行・信託・証券の拠点を一体化した総合的なサービスを提供する中核店と、相談業務などに特化した小規模店への再配置を進める。併せて、全国の2割に当たる約100拠点を削減する計画だ。
共通するのは、インターネットやスマートフォンによるサービスを充実させて“非対面チャネル”を強化する一方、“対面チャネル”はデジタル技術を駆使して効率的に運営しようという点である。
手元のスマホで口座明細の確認や振り込みができるようになり、来店する人が減った。駅前一等地に構え、あらゆる金融サービスを提供する総合型店舗の必要性が薄まっているのは確かだ。
低金利環境の長期化で収益を確保しづらくなっており、効率の悪い店舗の改革は経費削減の有効な手段となる。顧客行動の変化や収益環境を考えると、店舗改革は当然の流れだ。
だがすべての利用者のニーズを満たしながら、店舗改革を進めるのは容易ではない。例えばデジタル技術に疎い高齢者や、事業承継など複雑な問題を抱えた中小企業経営者など、対面による応対が必要な顧客を改革の中でどうフォローするのか。
銀行は資金決済や金融仲介機能を通して経済発展に資する公共的な使命も負っている。店舗改革は効率化だけに走るのではなく銀行業の公共性も念頭に置いて進めるべきだ。
(2017/12/5 05:00)