[ オピニオン ]
(2018/6/21 05:00)
山口県や山口フィナンシャルグループ(FG)など、山口県の産官学金が連携してベンチャー(スタートアップ)企業を育成、誘致する取り組みが始まった。県内の60企業・団体が出資や技術提携して、地域の主力産業へと脱皮させる独自のプログラムだ。代表アクセラレーター(支援者)に同県出身の宮坂学ヤフー社長を迎えるなど、地域や業態を超えた取り組みは新たな企業支援プログラムと注目を集めそうだ。
「YMFGユニコーンプログラム」と題した取り組みは、山口県周辺地域に県内外の新興企業を集め、イノベーションを興すのが狙い。YMFGは30億円のファンドを用意し認定企業に出資するほか、自治体や大学、県外企業との仲介役も担う。アクセラレーターにSBIインベストメント、オリックス、ゴールドマン・サックス証券などベンチャーキャピタルが含まれている点も見逃せない。
5月末に山口銀行本店で、予選を通過した12社が宮坂社長や村岡嗣政山口県知事、吉村猛山口FG社長ら支援者を前に事業内容を披露した。東京都や福岡県など全国から登山地図アプリを使う観光サービスや、ゲノム技術を活用した医療・畜産応用化事業などユニークな企業が登壇。今後事業化に向け議論を進める。
山口県は中国地方で最多の年間4000人規模の社会人口減が進んでいる。村岡知事は企業誘致による雇用増で人材流出に歯止めをかけようとしており、優秀な人材確保には成長産業を産み、育てる仕組みが不可欠。ユニコーンプログラムは自治体が誘致の柱とする制度融資ではなく、産官学金が連携してベンチャー企業を中堅企業へ、また地域を代表する産業へと成長させる独自の取り組みといえる。
今年は明治維新150年。維新を主導したのが長州藩(現山口県)だ。変化に柔軟に対応できる土地柄だけに支援者は惜しまず、地域は見守り、企業は真摯(しんし)に取り組む。このトライアングルがうまく機能すれば、変革を意味する“維新”の風が再びこの地から吹き荒れるだろう。
(2018/6/21 05:00)