[ オピニオン ]
(2018/7/25 05:00)
赤﨑勇名城大学教授、天野浩名古屋大学教授、中村修二米カリフォルニア大学教授が2014年のノーベル賞を受賞した青色発光ダイオード(LED)の材料である窒化ガリウム(GaN)をLED以外のさまざまなパワーデバイスに使おうという研究が本格化する。
名古屋大学がGaN技術の新しい研究展開と実用化を目指す拠点を構築しており、その第1弾として、東山キャンパスにエネルギー変換エレクトロニクス実験施設が完成、24日に開所式を行った。同施設では、GaNの結晶成長・評価、デバイス製作プロセス研究からデバイス試作・評価を一貫して手がける。
無線通信用の高周波デバイス、電力制御用のパワーデバイス、医療や化学分析で使う紫外線発光デバイスなどへの応用を目指す。GaNでこれらが作れれば、これまでのシリコンや化合物半導体に比べ大幅な省エネルギーが実現できるという。同施設では基礎研究だけでなく、それを発展させたGaNデバイス実用化も視野に入れている。
研究成果が実用に結び付かない“死の谷”を克服するため社会応用の研究者・技術者が協力し、産学官で取り組む。すでに豊田中央研究所、豊田合成、三菱電機などが参加する産学コンソーシアムも構築されている。
企業がGaNデバイスを開発する場として活用できるよう、2019年4月に完成する研究棟内に約2000平方メートルの企業研究拠点スペースを設ける。
名大がGaNの応用に力を入れているのはシリコン半導体に比べて大電圧に耐えることから、大幅な省エネルギーが実現できるためだ。例えば、現在シリコンが主流の直流・交流変換器ではエネルギー損失が10分の1程度になるとみられている。
環境省の資料によれば、電気自動車やパワーコンディショナー、野外照明、データサーバー、マイクロ波加熱ヒーター、電力インフラなどにGaNデバイスを使えば、日本の二酸化炭素(CO2)排出量を2%削減可能としている。産学共創の名大のGaNデバイス研究の挑戦が実を結ぶことを期待したい。
(2018/7/25 05:00)