ヨシオ工業、多様性育み時代に順応 学び直し・副業奨励

(2024/4/9 12:00)

  • 大規模な設備投資を実施。最新の工作機械を複数導入し、顧客や仕事の幅が広がった

1961年に石川県野々市市で創業したヨシオ工業(石川県白山市、徳野新太郎社長)。かつては自社ブランドの小型ラジアルボール盤を主力としてきたが、現在は工作機械メーカーとして培ってきた技術力を生かし、機械部品の設計・加工や大手メーカーへのOEM(相手先ブランド)供給といった請け負い型の事業モデルに転換、成長している。リスキリングや副業容認などで従業員の多様性を育み、変化の激しいデジタル時代に順応している。

「社会に価値を認められるような人材に育ってほしい。社会とのつながりの中で個人の力がアップデートされ、それを最大化することで結果的に企業価値向上につながる」。徳野社長の持論だ。

徳野社長が家業を継いだのは2021年。長年勤めた東京の会計事務所を辞め、18年から経営に携わってきたが、債務超過すれすれの赤字体質が定着していた。「だらだら仕事をしているな」。当時はもどかしい思いを抱えていた。

社長就任後、真っ先に手を打ったのは従業員のマインドセットだ。「業績が悪いのはなぜだと思う?」。すべての従業員と対話する中で、学びが仕事に対するやりがいを取り戻す近道だと分かった。

  • 独自の社内イントラネット「ヨシオ・ポータルサイト」を操作する盛田組立加工部部長。業務連絡や申請などはすべてここから可能

県内同業の会社見学や顧客訪問などを重ねたほか、従業員の3―4割を配置転換した。さらに複数の社員にはファクトリーサイエンティスト協会のリスキリング講座を受講してもらい、イノベーションを創出するデジタル人材の育成に力を入れた。多様性を受け入れる企業風土が醸成され、従業員のコミュニケーションも深まった。

加えて副業も解禁。パン屋に美容師、カメラマンなど10人弱が副業しているという。「検定や副業などで技能を高め、自分の市場での評価も理解してほしい」(徳野社長)。

ヨシオ工業の業績は22年3月期以降、各利益段階で黒字化し、23年には過去最大級の設備投資を実行した。DMG森精機の5軸加工機など高性能の工作機械を導入、顧客の裾野や「仕事の幅が広がった」(盛田義浩組立加工部部長)。25年3月期も「5―10%の増収が期待できる」(徳野社長)という。

「10年で社長を辞めます」(同)。従業員にはそう伝えてある。「世襲にせず、生え抜きから次期社長を選ぼうと。それも従業員のモチベーションにつながる」(同)。徳野社長は今、スタートアップなど外部の複数企業の経営にも参画しているほか、ヨシオ工業の株式上場も見据え、多忙な日々を送る。

(2024/4/9 12:00)

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