[ 科学技術・大学 ]

【電子版】米軍の宇宙ごみ接近警告、18年に400万回超 不審衛星追跡は3割増

(2019/7/3 05:00)

  • 米カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地にある「連合宇宙運用センター」を一部メディアに公開し、任務内容を説明する同センター責任者のブロデュアー大佐(6月19日、時事)

【ワシントン=時事】米軍が2018年に人工衛星と宇宙ごみ(スペースデブリ)の衝突の危険を警告した件数が、5年前と比べて4倍の約400万回に上ったことが2日、分かった。他の衛星に危険を及ぼすような不審な動きをする衛星を追跡した事例も3割増加。中国やロシアが宇宙の軍事利用を加速する中、米軍は日本など各国と連携し、宇宙空間の監視能力を強化したい考えだ。

 米戦略軍統合軍宇宙構成部隊が管轄する「連合宇宙運用センター(CSpOC)」は、各国の衛星や宇宙ごみなど約2万5000の対象物を24時間体制で監視。妨害や攻撃行為から米国や同盟国の軍事・商業衛星を防衛する任務などを担う。宇宙ごみが衛星に衝突する危険がある場合には、衛星の所有・運用者に「デブリ接近情報」を発信し、衝突回避を促している。

 宇宙構成部隊によると、接近情報の発信回数は13年には約100万回だったが、18年には約400万回に増えた。「宇宙ごみなどの増加や、より小さな物体を監視する能力の向上」が接近情報の急増につながったという。

  • 2004年にアルゼンチンに落下した宇宙ごみ(6月19日、米カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地=時事)

 同部隊のホワイティング副司令官は、情報収集から陸海空における部隊連携、精密誘導爆撃、ミサイル防衛に至るまで「米軍の全ての活動は一定程度、(衛星などの)宇宙能力に依存している」と指摘した。中国やロシアは米軍の優位性を覆すため、地上から衛星を破壊するミサイルや通信妨害装置、宇宙から他国の衛星を攻撃する「キラー衛星」の研究・開発を進めているとされる。

 同部隊が不審な動きをする外国の衛星を追跡した事例も昨年、13年の100回から130回に増加した。ホワイティング氏はこの何割がキラー衛星によるものか具体的言及は避けつつも、「軌道上で悪意ある活動を間違いなく確認している」と語る。

 米軍は宇宙状況監視(SSA)能力を強化するため、同盟・パートナー国との協力を拡大している。カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地にあるCSpOCには現在、英国やカナダ、オーストラリアなどが人員を派遣。日本も航空自衛隊に宇宙空間の状況を常時監視する宇宙領域専門部隊を新設する予定で、CSpOCにも連絡官を送る方針だ。

 ホワイティング氏は「パートナー国との連携で互いの能力を活用し、相互に運用を強化できる」と強調。「日本が連絡官を派遣すれば、宇宙分野での協力関係を深化できる」と期待を示した。(時事)

【宇宙ごみ】故障した衛星やロケット、衛星同士の衝突などで発生し、地球を周回する破片。スペースデブリとも呼ばれる。2007年の中国による衛星破壊実験や、09年の米ロの衛星同士の衝突で増加。今年3月にはインドが自国の衛星をミサイルで破壊する実験に成功し、約250個の宇宙ごみが発生した。現在の機器ではソフトボールサイズまでの宇宙ごみを観測できるが、米軍によれば、より小さな宇宙ごみは推定約50万個。これらの物体は秒速数キロメートルの高速で移動しているため、衛星に衝突すれば「死活的ダメージ」(日本の防衛省関係者)を与える。(時事)

(2019/7/3 05:00)

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