[ オピニオン ]

社説/7―9月期GDP2.2%増−トランプ・ショック、成長鈍化懸念

(2016/11/15 05:00)

日本経済が低成長を抜け出すきっかけになるのだろうか。内閣府が14日に発表した2016年7―9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率2・2%増と3四半期連続でプラスを記録、民間シンクタンクの事前予想を上回る結果となった。

2%を超す成長をみせた要因は外需にある。新興国向けの持ち直しなどで輸出が増加。一方の輸入が内需の弱さを受けて減少したため、外需のGDP寄与度は内需のそれを大きく上回った。ただ外需主導の経済成長は安定性に欠けるため、今後に課題が残る。

これに対し、個人消費は夏場の台風や9月の猛暑といった天候要因で前期比0・1%増にとどまった。ちょっとしたことで買い控えてしまう消費者心理の弱さが垣間見られる。設備投資は3四半期ぶりに増加したものの同0・0%増。海外経済の低迷や円高による業績悪化によって企業マインドが慎重化していることが気がかりだ。

政府は“新・3本の矢”をテコに、20年ごろまでに名目GDPを600兆円にする目標を置いた。だが、これを実現するには年3%以上の成長率が必要とあって、この目標は早くも絵に描いた餅になりつつある。

今後を展望すると、米国の次期大統領にトランプ氏が選ばれたことで、世界経済の不透明感が一気に高まっている。トランプ氏は米国の国益を優先する姿勢を強調、TPP(環太平洋連携協定)からの撤退など保護主義的な通商政策を掲げているため、世界経済の発展を阻害することが懸念される。

これら「トランプ・ショック」により日本は外需に依存した経済成長が困難になるとみられ、内需拡大に力をいれる必要に迫られよう。政府はすでに決定している28兆円規模の経済対策をできるところから前倒しして、景気回復を後押しすることが肝要だろう。企業はM&A(買収・合併)や海外投資を含めた投資を積極化して収益力や成長力を強化すると同時に、雇用・所得環境の改善という大きなプラスをもたらすことで、日本経済に貢献してほしい。

(2016/11/15 05:00)

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