[ オピニオン ]

社説/同一労働同一賃金−日本企業の良さを生かした制度に

(2016/12/20 05:00)

「同一労働同一賃金」をめぐる議論が本格化している。ただ運用にあたっては拙速を避け、日本の産業界の実情に即した仕組みを考える必要がある。

政府はきょう、仕事が同じでも雇用形態によって賃金に差をつけるなどの不合理な待遇差を例示した指針を策定する。これを非正規社員の処遇改善につなげる考えだ。

産業界も政府に歩調を合わせて前向きの姿勢をみせる。経団連は春季労使交渉に向けた経営側の基本方針で、同一労働同一賃金に関する記述を6年ぶりに復活する見通し。尻込みしていた経営者のベクトルが、非正規社員の待遇改善へと向かいつつあることは一定の評価ができよう。ただ今後については、欧州諸国との違いを踏まえた議論が求められる。

欧州では産業別の労使団体が協約を結び、職種ごとに技能の等級に応じた賃金を設定する。こうした産業横断的に適用される職務給が存在することは日本との大きな違いであり、正規・非正規の差もない。

他方、日本では歴史的に、企業ごとに労使間で賃金を決定する手法が定着している。企業によって賃金体系・内容は多様なのが当たり前だ。

同一労働同一賃金をめぐる議論では、一部に欧州型の職務給を積極的に取り入れるべきだとの声がある。しかし長期的な人材育成を重んじる日本の雇用慣行は、全面的に否定すべきものではない。日本の良さが損なわれることのないように配慮することが肝要だ。

またポストが空いた時に職務に見合った有資格者や経験者を採用する欧州に対し、日本は新卒一括採用がなお主流だ。人材採用のあり方を含めた幅広い視点も求められる。

そもそも何をもって「同一」とするかは難しい問題だ。中小企業からは「賃金差の合理性をどう立証するのか」といった不安の声が聞かれる。

働き方は多様化している。同一労働同一賃金が職種の固定化を招いたり、労働者の向上心を損ねたりするようでは困る。産業界も知恵を絞るべきだ。

(2016/12/20 05:00)

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