[ オピニオン ]
(2017/6/1 05:00)
支払い遅延や不当な減額、返品、利益提供要請など、安易に下請け事業者にしわ寄せするコストダウンは、結果的に親事業者の競争力をむしばむ。法令順守を肝に銘じ、親子双方に利益となる健全なサプライチェーンの構築につなげたい。
公正取引委員会が2016年度に下請法違反で指導した件数は、前年度比約5・4%増の6302件に上り、7年連続で過去最高を更新した。業種別では製造業が2676件で4割を占め、卸売業1401件、情報通信業542件、運輸・郵便業439件などが続く。企業名を公表する勧告件数は7件増の11件だった。
増加した背景について公取委は「経済の好循環実現に向けた政労使会議の合意・決定を踏まえ、政府の施策が浸透してきた」と分析。「下請け事業者が書面調査に積極的に回答するようになり、親事業者の自発的申し出も増えている」という。
公取委と中小企業庁は16年12月に下請法運用基準を改正して違反行為事例を66から141に大幅に増やした。下請代金の支払いをできる限り現金とし、手形の支払いサイトも将来的に60日以内とするよう努めることなどを各業界団体に要請した。
自動車や素形材、電機・情報通信機器など8業種21団体が取引条件改善に向けた自主行動計画を策定。企業庁は9―10月に各団体のフォローアップ調査に乗り出すとともに、全国に配置した下請けGメンが年2000件以上の下請け中小企業を訪問し、違反事例の実態を探る。
政府が対策に力を入れているにもかかわらず、下請法違反が相次ぐのは、関係法令や指針、自主行動計画の内容について、親事業者の経営層への浸透が浅いからではないか。違反すれば企業の信用は傷つく。経営問題として捉えるべきだ。
下請けも失注を恐れて黙り込むのではなく「下請けかけこみ寺」などを活用して取引条件の改善を探るべきだ。16年度下請取引適正化推進月間のキャンペーン標語の特選作品「下請けの 確かな技術に 見合った対価」を忘れてはならない。
(2017/6/1 05:00)
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