[ オピニオン ]

産業春秋/「企業の歩み」から得るもの

(2017/6/27 05:00)

1874年(明7)に輸入砂糖商として神戸で創業し、大正期に売上高日本一の総合商社に上り詰めた鈴木商店。1927年(昭2)に破綻したものの、神戸製鋼所や帝人、双日など日本を代表する多くの企業の源流である。

そのOBらが60年(昭35)に屋号の「かね辰」にちなむ親睦団体「辰巳会」を発足した。2014年には神鋼などの協賛を得て、ウェブ上に「鈴木商店記念館」を開設した。さらに、かつて本店があった神戸市中央区栄町通に記念碑を建立、7月7日の除幕式後に市に寄贈する。

鈴木商店の歴史は城山三郎の小説『鼠』などで知られる。創業者の鈴木岩治郎、大番頭の金子直吉らが自由な気風で人を育て、後世に企業家精神を受け継いだ。その偉業は今も多くの人に敬愛される。

1918年(大7)の米騒動で市民の焼き打ちに遭ったのが衰退のきっかけのように思われがちだが、食品や繊維、化学、鉄鋼、造船、海運など多角化経営と急激な業容拡大に、人も組織もついていけなかった。資金調達機能を育てなかったことも経営の行き詰まりにつながったと指摘される。

繁栄と破綻の歴史から何を学ぶか。バーチャル記念館の貴重な資料で予習して、除幕式に備えようと思う。

(2017/6/27 05:00)

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