[ オピニオン ]
(2017/7/31 05:00)
具体的な地図の提示は、小さいながらも意義ある一歩だ。国民的な理解の醸成のため、丁寧な説明を積み重ねてほしい。
経済産業省は高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた「科学的特性マップ」を公表した。埋設処分場として不適当な火山や活断層の近く、軟弱地盤などの自然条件を地図上に記載したもの。また天然ガスなど地下資源の分布地域も将来、掘削する可能性があるため明示した。これらを除外した上で、陸上輸送を考えて海岸から20キロメートルの範囲を処分場の候補になり得る地域としている。
ただ、この段階で候補となるのは国土面積の約30%。全国の市区町村の半分に当たる900強の自治体が範囲内にあり、東京23区の一部や山岳地帯も含まれている。実際に処分地として適当かどうかを判断するためには、大深度のボーリングなど詳細かつ長期的な調査が必要であり、すぐには決まらない。
国は、高レベル放射性廃棄物をガラスと混合して溶融・固化し、分厚い鉄のカバーと緩衝材で封じて地下300メートル以上の深さの安定した岩盤の中に埋設する「地層処分」を目指している。国内にはガラス固化体2万5000本相当の廃棄物があり、これは現世代の責任として処分しなければならない。
地層処分は十分に安全性を考えた方法だが、それでも同意する自治体を見つけるのは難しかろう。経産省は今後、今回のマップを活用して複数の地域で住民に処分方法を説明し、理解を求める考えという。くれぐれも特定地域への圧迫にならないよう配慮し、疑問にしっかり答えていくことが大事だ。
欧州ではフィンランドやスウェーデンが類似の方式で処分地を選定している。日本でも国民の理解が徐々に進むことを期待したい。
放射性廃棄物の無害化には数十万年を要する。“核のゴミ”処理はそれだけ遠い道のりであり、地層処分がベストではない可能性もある。ただどんな場合でも弱者に処分場を押しつけず、透明かつ安全を大前提に進めていく必要がある。
(2017/7/31 05:00)