[ オピニオン ]
(2017/10/12 05:00)
4月に始まったガス小売りの全面自由化は、家庭用市場の争奪戦だけでなく、すでに自由化している産業用市場にも活性化をもたらした。今後は事業者同士の連携や統廃合による効率化と競争力強化を期待したい。
ガス自由化のスタートダッシュは、前年に自由化した電力に及ばなかった。日本ガス協会によると、自由化から5カ月経過時点で需要家が事業者を変更したスイッチング率は電力が2・68%だったのに対し、ガスは1・9%にとどまった。
関西や中部、北陸では電力を上回る水準で契約変更があったものの、最大消費地の東京圏で新規参入業者の体制整備が遅れたのが原因とされる。
いずれ東京圏で競争が本格化すれば、さらにスイッチングが進むだろう。ただガスの自由化はガス管を敷設している都市部だけの競争だ。全国のガス管がつながっているわけではないので、事業者間のシェア変動の衝撃は限定されよう。
一方、見落としてはならないのは、すでに自由化している産業用などの大口需要家向けの競争が激化していることだ。新規参入業者のガス供給拠点の整備が進み、法人などの需要家に攻勢をかけはじめた。東京ガスはじめ既存ガス会社は、これに脅威を感じているという。
実は先行した電力でも同じことが起きている。自由化から1年余で、すでに自由化したはずの業務用電力でも、家庭用電力と同水準のスイッチングが起きて、新規事業者が新たな顧客を獲得している。
エネルギー供給の選択肢が増えることは、需要家である産業界にとって良いことだ。ただ、単にシェア争奪のための低価格競争で、事業者が疲弊するのは困る。またガスの場合、競争のメリットを受けられるのが限られた地域であることも問題だ。
自由化を推進する経済産業省は、事業者同士の競争から新たな総合エネルギー企業を生み出したいとしている。事業者同士の連携や統廃合を進めることで、エネルギーコストの削減と日本の産業競争力強化をともに実現したい。
(2017/10/12 05:00)
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