[ オピニオン ]
(2017/10/17 05:00)
今日は予約でいっぱいという久しぶりに訪れた店。入ってみると満席というわけでもない。女将に聞くと、従業員がいなくなり、大将と2人で切り盛りできる程度に客を抑えているとのこと。
ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」の世界でも、人手不足が深刻化しているという。自宅近くの江戸前すし店の主人によると、料理人を志す若者がフレンチやイタリアンに流れるだけではなく、最初から海外に行く若者も少なくない。
店の側は厳しい板前修業から逃げ出そうとする若者を、次につなげるようにうまく叱ることができない。店主は「このままでは和食の質は確実に低下する」と嘆く。
数年前に入った店で「大将の腕に憧れ、どうしても働きたいと手紙を書いて、ようやく弟子入りさせてもらった」と若い板前がうれしそうに話していたのを思い出す。このような若者はどこにいっただろうか。
新潟に赴任していた当時からお世話になっている若い店主の「カネもうけをしたいだけなら、すしは握っていません」という言葉が胸を打つ。客に喜んでもらうことこそ、料理人の喜び。それを理解してもらうことに、人材不足打開のヒントがありそうに思える。モノづくりも同じかもしれない。
(2017/10/17 05:00)