鋳物の認知向上へキャンプ用品製品化 エフキャストデザイナー・坂下和長氏に聞く

(2024/5/15 12:00)

建築物の内外装の装飾に使われるアルミニウム鋳物を中心に、鋳造を手がけるエフキャスト(福岡県須恵町、古屋裕司社長)。オーダーメードを基本に大型製品を得意とする。同社は、鬼の頭が付いたテント固定具「オニペグ」を製品化した。伝統工芸品である博多人形の人形師と協力した開発など、幅広い連携で完成した。同社でデザイナーを務める坂下和長氏に開発の経緯や手応えを聞いた。

―オニペグの開発経緯を教えてください。

「福岡県が支援する事業で『鋳物で作ってほしい』と声をかけられたのがきっかけ。設計された物を製作するだけではなく、自社から発信していける物を作りたいという思いが以前からあった。手に取って使ってもらえる物をアルミ鋳物で作っていけば、鋳物の感覚を記憶してもらえる。将来、『建築に使ってみようか』と思ってくれるかもしれない。将来のための種まきのつもりで作る感覚もあった」

「飾っておく物ではなく使う物ということで、キャンプ用品のペグになった。博多人形の造形を、焼き物ではない素材で実現することを目指した。縁の下の力持ちの意識で取り組んだ」

―どのようにデザインしていきましたか。

「伝統を意識し過ぎてその要素があまりに強くなると、飾られてしまうのではないかと考えた。すっきりした形になるように直線と曲線を用いた。自分がキャンプ好きであることを生かし、一般のペグもいろいろ使ってみて研究した。たたいて使うため強度が欠かせない。たたいたときに力が加わる場所を想定し、必要な箇所は肉厚にして補強するなど検討しながら何度も作り直した」

―鬼にした理由は。

「魔よけの意味だ。鬼といえば赤鬼・青鬼ということで赤青2本ある。テントのペグ全部に使うのではなく、入り口の2カ所でにらみを利かせる」

―開発を通じて学んだことはありますか。

「作るのは作品ではなく商品。作って終わりではなく、売らなければならない。そのためには独り善がりになってはならず、デザインのこだわりでも捨てなければならない部分も出てくる。そんなときには潔さが必要だ。新しいものを作るときは毎回葛藤がある」

(2024/5/15 12:00)

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