社説/三つの賃金格差 歴史的春闘も残る課題に対応を

(2024/6/7 05:00)

「三つの賃金格差」を是正したい。大企業と中小企業の平均賃上げ率の格差を縮め、男女間や地域間の格差も改善することで、賃上げの裾野を拡大することが求められる。2024年春季労使交渉(春闘)は33年ぶりの高水準で推移し、経済の好循環実現に向けた起点になると評価できる。ただ残された課題も少なくない。一つひとつ是正し拡大均衡の経済に移行したい。

連合がまとめた3日時点の回答集計によると、定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率(加重平均)は5・08%で、33年ぶりの5%台で推移。300人未満の中小組合も4・45%と堅調ながら、企業規模による格差は鮮明だ。

大企業に見劣りする賃上げ率を引き上げるには、労務費の高騰分を取引価格に上乗せする価格転嫁が欠かせない。日本商工会議所の4月の調査では、賃上げ分の4割以上を転嫁できた企業は33・9%にとどまる。経団連はこのほど「企業行動憲章」を改定し、「サプライチェーン(供給網)全体の共存共栄を図る」との文言を盛り込んだ。取引適正化に向け、親企業の理解と協力が進むと期待したい。

男女間の賃金格差は、男性の賃金を100%とすると女性は約75%にとどまる。勤続年数が短いほか、管理職比率も低い。政府のプロジェクトチームは5日、特に格差が大きい5業界に対し、是正に向けた行動計画を策定するよう求めた「中間取りまとめ」を公表した。5業界は金融・保険業、食品製造業、小売業、電機・精密業、航空運輸業だ。政府は女性活躍を促す目標設定を求めており、実効性のある計画を打ち出してほしい。

23年度の最低賃金は、全国加重平均で初めて時給1000円を超えたものの、東北や四国、九州で800円台が多い。地域間の格差を是正しなければ、労働力の流出は止まらない。

政府は月内に経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)をまとめ、賃上げの定着に向けた施策を打ち出す。価格転嫁対策や中小企業・地方の活性化策も盛る。「三つの賃金格差」是正につながるか注視したい。

(2024/6/7 05:00)

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