[ オピニオン ]
(2018/8/28 05:00)
長崎県の地方銀行再編問題がようやく決着した。公正取引委員会が、親和銀行を傘下におくふくおかフィナンシャルグループ(FG、福岡市)と十八銀行(長崎市)の統合を認めることを公表した。これにより、他の都道府県での地銀再編を後押しすることになる。今回の長崎の地銀再編をめぐる議論は、将来の地銀に求められる持続可能なビジネスモデルを考える良い契機としたい。
地銀がおかれた経営環境は今後一段と厳しさを増していく。少子高齢化・人口減少による経済の停滞や市場規模の縮小、フィンテック(ITと金融の融合)などのテクノロジーの進化による金融業の構造的変化、国内外の長短金利の低下による収益悪化といった状況に直面する。
では、これから地銀はどういった経営が求められていくのだろうか。金融庁は、近年、いくつかのリポートを公表している。2016年の「平成27事務年度金融リポート」と「平成28事務年度金融行政方針」が代表的だ。
その中で、金融庁は、持続可能なビジネスモデルの有力な選択肢として、「金融機関が顧客本位の良質なサービスを提供し、企業の生産性向上や国民の資産形成を助け、結果として、金融機関自身も安定した顧客基盤と収益を確保するという取り組み(顧客との『共通価値の創造』の構築)」を挙げている。
顧客との『共通価値の創造』の構築は、「事業性評価」が核心となる。金融機関が中小企業の貸し出し判断をする際、担保・保証や信用力の高さだけに依存するのでなく、経営者像や経営状況、事業内容、成長力などを適切に評価することに基づくことだ。
事業性評価を定着・普及させるには、目利き力向上や取引先との密接な関係構築が不可欠だ。地域密着型金融の原点とも言える。また、経営にIT分野の発展をいかに機動的に取り込み、効率性向上や組織変革につなげていくかも課題。地銀は金融機能や収益力強化を図りながら、地域が抱える問題・ニーズに応えていくかが求められる。
(2018/8/28 05:00)