[ オピニオン ]
(2019/7/3 05:00)
高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない。東京都がブレーキとアクセルを踏み間違えても急発進を防ぐ装置の取り付けに9割補助を決めるなど、自治体の独自対策も出始めている。運転に不安がある高齢者が免許を自主返納するのは当然だが、マイカーなしでの生活が難しい地域があるのも事実。官は後付けの急発進防止装置の普及を急ぐと同時に、車なしで不自由なく暮らせる社会の構築を急ぐべきだ。同時に自動車業界には、より高度な安全装置の開発を求めたい。
実は交通事故による死亡者数は大幅に減っている。2018年は3532人で、ピーク時の70年の8割減だ。免許を持つ75歳以上の運転者による死亡事故の発生割合も、12年前の半分以下。だが近年、ペダルの踏み間違いによる市街地での暴走や、高速道路の逆走といった、高齢ドライバーによる考えられない重大事故が頻発している。
こういう状況に対し、国は自動ブレーキなどが装備された車しか運転できない限定免許の導入や、免許更新期間の短縮、検査方法の見直しなどを検討している。また、多くの自治体で公共交通機関による移動支援の充実を進め、免許が返納しやすい環境づくりを進めている。だが即効性のある対策は、今走っている車に安全装置を普及させることだろう。
かつては手動変速機の車が大半だったため、クラッチ操作が難しくなった高齢者は運転できなかった。だが今の自動変速機(AT)の車は、判断力や身体機能が衰えた高齢者でもなんとなく運転できてしまう。高齢者が車を手放さない理由の一つがここにある。ATの利便性を後退させられない以上、メーカーは最新技術を駆使して、事故を防止する新技術を開発してほしい。こうした新技術は競争力の向上に直結するものだ。
わが国は35年には5人に1人が75歳以上になる。今、同年代の免許保有率が4割を超える地域もあり、このままでは運転者の10人に1人が75歳以上という社会が現実になる。すべての対策は待ったなしの状況だ。
(2019/7/3 05:00)