社説/出生数急減の危機 経済不安の払拭に全力を

(2020/9/10 05:00)

新型コロナウイルス感染の長期化で出生数減少に拍車がかかる恐れが出てきた。次期政権はコロナの早期収束を図るとともに、経済再生と成長戦略の再構築に道筋をつけ、景気の先行き不安払拭(ふっしょく)に全力を挙げたい。

厚生労働省の人口動態統計速報によると、2020年上半期(1―6月)の婚姻数は27万129組で前年同期比14・7%減少。過去10年間で最大の落ち込みとなった。19年が改元に合わせた「令和婚」ブームで18年比で増加した特殊要因を考慮しても、コロナ禍に伴う景気悪化の影響は大きいと推測できる。

第一生命経済研究所は結婚式場の取扱件数などをもとに、21年の出生数は前年比で10%ほど減少すると推計。熊野英生首席エコノミストは婚姻数の減少とともに「コロナがさらに長引けば第1子の出産を遅らせる動きが顕著になる」と危惧する。

出生数は19年に約86万人と1899年の統計開始以来初めて90万人を割り込んだのは記憶に新しい。コロナ収束が遅れれば21年は80万人を下回るかもしれない。人口構成に歪みが生じ、将来の労働力人口や社会保障に影響が及びかねない。

自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官は、出産を希望する世帯への支援として、不妊治療の保険適用を実現させる考えを表明した。実行すべき施策だが、経済不安という根本的な課題を解消しなければ、子を安心して産み、育てる気持ちにはなれない。

企業の地方分散と産業構造転換の地ならしも不可欠だ。コロナ禍では東京一極集中の脆弱(ぜいじゃく)性があらわになった。若者が地方で働き口をみつけ生活していけるよう改革してほしい。そのためにはコロナ禍で停滞気味な成長戦略を再構築し、ベンチャー創出や大企業の本社移転などを通じて地方の雇用拡大を促す必要がある。

次代を担う意欲ある若者が、安心して結婚や子育てができる社会を実現することこそ、コロナ禍で学んだ教訓ではないか。多くの若者失業者を生んだバブル経済崩壊後の過ちを繰り返してはならない。

(2020/9/10 05:00)

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