(2022/5/31 05:00)
「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)」は人的資本、技術革新、スタートアップ、脱炭素、デジタルの成長5分野に重点投資することを盛り込む。日本の低い潜在成長率の引き上げに向け、政策の方向を示した「基本方針」としては評価できる。ただ時期や実効性など今後の肉付けに向けた課題も少なくない。
人的資本への投資では最低賃金を「できるだけ早く」全国加重平均の1000円以上を目指すと抽象的で、脱炭素への投資で新設する20兆円規模の基金の使途も見える化する必要がある。デジタルへの投資では「デジタル推進人材」を26年度末に230万人育成するというが、デジタル推進人材とはどのような人材なのか、よく分からない。
骨太方針には「防衛力を抜本的に強化する」との一文も記される見通しだ。23年度の防衛予算について政府は6兆円台を視野に入れるが、「額ありき」で使途が見えない。国内総生産(GDP)比で1%以下を目安とした防衛予算を同2%以上とする「将来」の姿も大きな課題として残る。慎重かつ十分な国会審議が求められる。
強まる歳出圧力に対し、どこまで財政規律を順守できるかも不透明だ。内閣府による1月の試算では、実質2%程度の高い成長率を実現しても、国・地方の基礎的財政収支が黒字化するのは26年度で、政府の25年度黒字化目標を達成できない。成長による税収増に依存する“上げ潮”では目標達成は難しく、「賢い支出」など達成への道筋を示してもらいたい。
政府は23年度防衛予算の「相当な増額」の財源について、将来の償還財源を示す「つなぎ国債」で賄うことを検討する。参院選も見据え、赤字国債の乱発という国民批判を回避する狙いとみられるが、償還財源の中身がどう決まるかも気がかりだ。
東アジアで強化を迫られる安全保障、遅れたデジタル化、エネルギー対策など日本には課題が山積する。将来世代に禍根を残さないため財政規律に配慮しつつ、確かな安全保障・成長戦略の肉付けを政府に求めたい。
(2022/5/31 05:00)
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