社説/世界経済「下方」修正へ G20分断も新興国支援で協調を

(2022/10/10 05:00)

国際通貨基金(IMF)は2023年の世界経済見通しを11日に下方修正する。長期化の様相を呈するインフレ、各国の金融引き締めによる経済減速、新興国・途上国で深刻な資本流出などを背景に、世界経済の3分の1を占める国・地域に景気後退の可能性があるという。日本は円安と外需の縮小により、輸出が大打撃を受けかねず、今後の世界経済に警戒したい。

IMFのゲオルギエワ専務理事が6日、現在2・9%とした23年の世界の実質成長率見通しを下方修正すると表明した。22年に入り4回目の下方修正。10―16日に米ワシントンで開催されるIMF・世界銀行年次総会を前に講演し、厳しい世界経済の先行きに警鐘を鳴らした。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う食料・エネルギー価格の高騰を受け、主要国はインフレ退治の金融引き締めを加速している。だがインフレに緩和の兆しはなく、利上げが各国の経済を直撃。中でも新興国・途上国の資本が金利の高い海外に流出しているほか、自国通貨安により外貨建て債務も膨張している。

12、13の両日にワシントンで20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。歴史的インフレの緩和に向けた金融引き締めの継続、低所得者などへの財政支援、新興国・途上国に対する債務再編(返済条件の緩和)などの政策で協調することが期待される。日中印は新興国・途上国の主要な債権国で、日本は経済危機に陥っているスリランカなどの債務再編で主導的な役割を担いたい。

ただG20財務相・中銀総裁会議は最近2回の会合で共同声明を採択できていない。G20には中国とロシアも含まれ、ウクライナ情勢をめぐる立場や思惑の違いから機能不全に陥っている。ロシアによるウクライナ東・南部4州の併合宣言が分断の溝をさらに深めている。ウクライナ問題を除いたマクロ経済運営や新興国・途上国支援で協調することを確認したい。

政府・日銀は9月22日に約24年ぶりに円買い・ドル売りの為替介入を行った。今回のG20では為替介入への理解も得たい。

(2022/10/10 05:00)

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