社説/米利上げ継続観測 為替動向、日本経済の行方焦点

(2023/2/20 05:00)

米国の堅調な経済指標を背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め(利上げ)が長引くとの観測が金融市場で広がっている。高水準の物価上昇率を抑制する利上げが長期化しても、経済は急減速しないとの楽観論も市場で台頭している。人手不足に伴う賃金上昇とサービス価格の高騰がいつ沈静化するのか、円ドル相場に影響するだけに注視したい。

パウエル米FRB議長を驚かせた1月の雇用統計。非農業部門の雇用者数が前月比で51・7万人も増え、市場予告の18・8万人増を大きく上回った。さらに1月の消費者物価指数が前年同月比6・4%上昇し、市場予測の6・2%を上回った。

米国が政策金利の利上げ幅を0・5%から0・25%に縮小した2月2日の決定を受け、金融市場では3月のFRB会合での利上げを最後に利上げは停止され、年内に利下げに転じるとの見方が広がっていた。だが2月中旬に発表された堅調な経済指標を受け、5月あるいは6月会合までの利上げを市場は視野に入れている。米国には金融引き締めに際し、景気にも十分配慮した慎重な施策を求めたい。

米国はコロナ禍で退職した中高齢者の復職が進まず、人手不足が深刻化している。1月の平均時給は前年同月比4・4%増と増え、中でもサービス価格の高騰につながっている。バイデン米大統領は不法移民の取り締まりを強化する一方、人手不足対策として合法的な移民の受け入れを推進している。移民依存の対策で労働需給をどれほど緩和できるのかを注視したい。

米国の利上げが長引けば、日米金利差の拡大を受けた円安進行が想定される。日本の2022年10―12月期の実質成長率(年率換算)はプラス0・6%と回復力が鈍く、日銀総裁候補の植田和男氏(経済学者、元日銀審議委員)も当面は現行の金融緩和を継続する意向を示す。ただ積極的な賃上げにより23年度に2%の物価上昇を見込めれば長期金利の上限を引き上げ、市場の歪みを是正する可能性がある。為替相場が局面変化を迎える事態も想定しておきたい。

(2023/2/20 05:00)

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