社説/中小「残業代」割り増し 労働コスト増を価格転嫁したい

(2023/3/1 05:00)

中小企業の人件費の負担増が懸念される。人手不足に対応した賃上げを迫られているだけではない。中小企業は4月1日から時間外労働の割増賃金率が大企業並みに引き上がる。今夏以降に実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の本格返済を控える中、人件費の負担が経営を圧迫しかねない。中小企業は生産性向上や業務効率化を進める機会と捉える一方、大企業は中小企業が求める価格転嫁を円滑に実行してもらいたい。

中小企業は4月1日から、1カ月で60時間を超えた時間外労働について、基準賃金に50%を上乗せする割増賃金率が適用される。現在の25%から大きく引き上がる。2010年の労働基準法改正により、大企業には50%の割増賃金率を適用し、中小企業は猶予期間を設けて25%にとどめていた。それが大企業と同率となり、人手不足を残業で賄っている中小企業には大きな負担増になりかねない。

月60時間を超える時間外労働を深夜(22時―5時)にさせた場合、深夜割増賃金率が加算されて割増率は75%に達する。中小企業の負担はさらに増えるため、働き方改革が求められる。

月60時間超の時間外労働について、割増賃金を支払う代わりに代替休暇(有給休暇)を付与することも可能だ。労働者の健康に配慮した措置で、こうした選択肢も活用することで多様な人材管理や人件費の抑制につなげることができる。ただ人手不足の課題が残り、中小経営者は難しい判断を迫られる。

人手不足に悩む中小企業は時間外労働で対応したり、人材確保のための賃上げなどを余儀なくされている。他方、コロナ禍の影響を受けた企業に、実質無利子・無担保で融資した「ゼロゼロ融資」の本格返済を今夏以降に控えるなど、中小企業の台所事情は楽観視できない。

中小企業の自助努力にも限界がある。原材料や賃金の上昇分を取引価格に上乗せする価格転嫁を大企業は推進してもらいたい。大企業は自社の賃上げにとどまらず、取引先にも十分に目配りし、中小企業の賃上げ原資を確保することが求められる。

(2023/3/1 05:00)

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