社説/悪い物価上昇 原油高・円安の節目突破を警戒

(2023/10/2 05:00)

原油価格は1バレル=100ドルの大台が視野に入り、円ドル相場は1ドル=150円台が目前だ。原材料費や輸入物価の上昇によるコスト・プッシュ・インフレ(悪い物価上昇)が10月に入りさらに深刻化しないか懸念される。政府は月内に物価高対策などを盛り込んだ経済対策を策定する。この対策の効果が市況変動で薄まらないか心配だ。政府は低所得者らを対象とした給付措置の検討に入った。財政規律に配慮し、費用対効果を重視した内容に仕上げてもらいたい。

原油が高騰している。米国産標準油種(WTI)は9月28日(現地時間)に一時1バレル=95ドル台に突入、2022年8月以来の高値を付けた。同100ドルは時間の問題とされ警戒したい。

石油輸出国機構(OPEC)プラスが6月に合意した協調減産の枠組み(24年末まで日量200万バレルの減産)とは別に、サウジアラビアが日量100万バレルの自主減産、ロシアが同30万バレルの輸出制限を打ち出したことが原油高騰の発端だ。これに米国の原油在庫の縮小が加わり、原油需給は一段と引き締まった。経済減速ながら中国の原油需要が底堅いことも、世界的なインフレ再燃の懸念を招いている。

米国は堅調な自国経済を背景に、インフレ退治に向けた高水準の政策金利を長期化すると市場は見立てる。つれて米国の長期金利に上昇圧力がかかり、日米金利差が市場に意識されて円安・ドル高の相場展開となっている。先週末は1ドル=149円前後の円安で推移した。賃上げ効果を減殺する悪い物価上昇を抑制するため、政府・日銀には適切な政策対応が求められる。

政府は月内にまとめる経済対策に、ガソリンや電気・ガスの価格抑制策と賃上げ促進税制の延長・拡充策などを盛り込む。輸入物価の高騰で価格抑制策の効果が薄れないか、賃上げ促進税制にどこまで効果を期待できるのか、懸念を拭えない。検討中の給付措置も住民税の非課税世帯に絞るのか、子育て世代まで拡大するかの判断も難しい。費用対効果を慎重に見極め、物価高から国民生活を守る実効性ある施策を講じてほしい。

(2023/10/2 05:00)

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