社説/総合経済対策(中)半導体など供給力強化急ぎたい

(2023/11/2 05:00)

総合経済対策は、所得・住民減税といった「国民への還元」と、変革を推進する「供給力の強化」を車の両輪とする。後者は、需給ギャップがプラスに移行しつつある状況に対応した適切な政策転換と評価できる。経済安全保障や脱炭素、デジタル化などの社会課題に対応しながら供給力を強化し、日本経済を新たな成長軌道に導きたい。

日本経済は需要不足から需要超過に移行しつつある。日銀は4―6月期の需給ギャップをマイナス0・07%と推計し、プラス圏が目前にある。これまでの経済財政運営は不足する需要を喚起してきたが、総合経済対策はこれを転換し、供給力強化へと政策の軸足を移す。生産性の向上で供給力を高め、少子化に伴う人手不足を克服し、0%台半ばの潜在成長率を上向かせたい。

総合経済対策では、「特定重要物質」と位置付ける半導体や蓄電池、電子部品などの国内での増産を促し、不透明な世界情勢に対応できる供給網を整備する。重要物質を増産する企業の法人税などを減額するほか、市街化調整区域でも重要物質の工場を立地できるよう規制を緩和する。疲弊する地域の産業集積を進めることで、地方創生や賃上げ効果も期待できよう。

労働市場も改革し、生産性を向上させる。学び直し(リスキリング)による能力向上や成長分野への労働移動を推進するほか、人工知能(AI)研究者への支援金給付制度も創設する。特許などの所得に対する新たな減税措置や、宇宙航空研究開発機構(JAXA)への10年間1兆円規模の基金も設けるという。広範に研究開発を促し、日本の存在感を高めていきたい。

物流の効率化に向けた自動運転の促進や無人地帯での自動ロボット(ドローン)の早期事業化、さらに中小企業の省人化投資や海外展開も後押しする。

国際通貨基金(IMF)によると、日本は2023年の名目国内総生産(GDP、ドル換算)でドイツに抜かれ4位に後退する見通しだ。日本政府は民間企業の活力を引き出す経済対策を推進し、新たな経済ステージに円滑に移行していきたい。

(2023/11/2 05:00)

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