社説/検証2023(下)世界の「3つのリスク」に警戒を

(2023/12/29 05:00)

2023年は前年にも増して国際秩序が脅かされている。イスラエルとイスラム組織ハマスとの軍事衝突が10月に勃発し、ウクライナ情勢と米中対立に続く三つ目のリスクが顕在化した。国際社会から厳しい視線が注がれるイスラエルがアラブ社会で孤立すれば、ロシアの友好国イランが支配力を高める。欧州ではウクライナ支援疲れからポピュリズム(大衆迎合主義)台頭の動きもある。三つのリスクは長期化が想定され、世界経済に及ぼす影響が懸念される。

中東情勢はイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘にとどまらず周辺国にも波及している。レバノンやシリア、イエメンの親イラン勢力はイスラエルをけん制。紅海ではイエメンの親イラン武装組織がイスラエル関係の商船を攻撃し、すでに物流に支障が生じている。米国とイランの対立を反映した形での紛争が拡大し、原油価格の高騰などにつながらないか警戒したい。

国際社会の目線が中東に集中する中、ウクライナへの支援疲れが広がらないか心配だ。米国は、共和党の反対でウクライナへの追加支援を盛り込んだ予算案の年内可決を断念。欧州連合(EU)も、ロシアが接近するハンガリーの反対でウクライナ支援が決まらない。スロバキアとオランダの総選挙では親ロシア派や極右政党が第1党となった。米欧は改めてウクライナ支援の結束を固める必要がある。

日本は防衛装備移転3原則の運用指針を改定し、ウクライナ支援で弾薬が不足している米国に地対空誘導弾「PAC3」を輸出する。間接的ながらウクライナを支援する意味は大きい。

米中関係は、11月の首脳会談で中断していた軍事対話の再開で合意し、緊張緩和に向けた歩みを進めたと評価できる。日中首脳会談でも対話の継続で合意しており、日米はこれを糸口に安全保障の安定化につなげてほしい。中国も経済が停滞する中で、米国とのさらなる摩擦は望んでいない。むしろ主要国との関係改善と外資誘致へと外交姿勢を修正した。ただ24年1月の台湾総統選の行方が米中関係に影響しかねず、警戒したい。

(2023/12/29 05:00)

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