2023年 第66回十大新製品賞

(2024/1/4 05:00)

増田賞

川崎重工業/ドライ・水素専焼 1.8MW級ガスタービンコージェネレーションシステム PUC17MMX

水噴射せずNOx低減

ドライ方式で水素専焼できる燃焼器を搭載した出力1800キロワット級ガスタービンコージェネレーション(熱電併給)システムだ。ドライ方式で水素専焼できるのは世界初。安定的に水素を燃焼し、大気汚染防止法の窒素酸化物(NOx)規制値を超えずに運用できる。工場の自家発電に最適だ。

ドライ方式は水噴射せずにNOxを低減する燃焼方法。天然ガスに比べて燃焼速度が速く、燃焼温度が高い水素で発電すると、NOx排出量増加や燃焼器部品の過熱が課題になる。燃焼方法を独自に組み合わせ、この課題に対応したシステムを開発した。天然ガスとの混焼運転にも対応し、水素を体積比50―100%までの任意の割合で利用できる。

本賞

アイダエンジニアリング/EV駆動用モーターコア生産向け 高速精密プレスライン

毎分130mの送り速度実現

高速精密プレス機大手のアイダエンジニアリングは電気自動車(EV)用モーターのモーターコアを生産するプレスライン向けに、加工対象物(ワーク)をプレス機に供給するアンコイラーや転積装置などの周辺装置一式を開発した。プレス機用の高トルクサーボモーター技術を応用し、周辺装置向けの小型モーターも開発。プレス機だけでなく周辺装置のモーターも一括制御することなどで業界トップ水準となる毎分130メートルの送り速度を実現した。

プレスラインの稼働状況を3次元(3D)モデルで示す監視制御システム(SCADA)も開発。直感的な稼働監視を実現するなどデジタル変革(DX)によるライン全体の効率化にも取り組む。

本賞

アマダ/サーボベンディングマシン 「EGB-e」シリーズ

未経験者も高精度板金

板金加工では曲げる順番や金型の段取りといったノウハウが必要になる。「EGB―e」シリーズでは音声操作やガイダンス機能、突き当てモニターなどを搭載し、未経験者でも熟練技能者から直接指導を受けているような感覚で、高精度な加工を容易にできる仕組みを構築した。また顔認証機能を搭載した数値制御(NC)装置「AMNC 4ie」を開発。作業者を識別して15カ国語の中から画面表示を切り替えるなど、誰もが操作しやすい環境を提供する。新サーボシステムも搭載し、サーボと油圧のハイブリッド方式と比べ、二酸化炭素(CO2)排出量を最大20%、油の使用量を約90%削減。人手不足や環境負荷低減などの社会課題の解決に貢献する。

本賞

オークマ/社会課題を解決するグリーンスマートマシン立形マシニングセンタ MB-VⅡシリーズ

世界最高水準の精度安定性

モノづくりの無人化や脱炭素化に向けたソリューションを搭載した立型マシニングセンター(MC)。新世代のコンピューター数値制御(CNC)装置「OSP―P500」を搭載し、機械が自律的に高精度を安定的に維持する知能化技術「サーモフレンドリーコンセプト」を備える。世界最高レベルの精度安定性を達成しており、暖機運転や寸法確認、工具補正など精度を確保する人手の作業を削減する。

また自動工具交換装置(ATC)のシャッター開閉などに用いていた油圧・空圧動作を完全電動化。動作のばらつきを最小化して、機械の稼働状態を正確に把握可能にし、無人工場に求められる高精度な遠隔監視や状態認識を実現した。

本賞

コマツ産機/Water Laser:TWCL/TWC

水中で形状切断が可能

水中での形状切断が可能なファイバーレーザー加工機を業界で初めて開発した。レーザー発振器の出力は6キロワット。独自方式により切断時のレーザー光を水中で安全なレベルまで減光することでレーザー安全クラス1を実現。これにより加工機のマシンカバーが不要になり、鋼材の出し入れなどの作業性を大幅に改善した。水中で冷却しながら切断することで製品間のピッチを縮めることが可能で、歩留まりの改善により鋼材費用を削減できる。

また熱による歪みも抑えられるため、不良率の低減も見込める。同じクラスのファイバーレーザー加工機と比べ電力使用量を約30%低減できるほか、炭酸ガスレーザー加工機との比較では二酸化炭素(CO2)排出量の年60トンの削減効果が見込める。

本賞

島津製作所/ガスクロマトグラフ「Brevis GC-2050」

小型で2種類同時分析

気体試料中に含まれる各成分の含有量を測定する分析装置。サンプル注入口や検出器、電気基板の配置などの構造設計を見直して小型化し、横幅は同社従来機種比約35%減を実現した。小型ながら2種類のサンプルを同時に分析でき、2倍の生産性を得られる。

従来、装置本体から行っていた分析操作や装置状態の確認作業を、手元のタブレット端末などで確認できる機能を搭載。メンテナンス動画やよくある質問と回答も閲覧できるほか、装置が試験開始に適した状態を自動設定するため、初心者でも的確なメンテナンスや安定した分析結果の取得が可能だ。一般的なガスクロマトグラフと比べて消費電力を約3割削減するなど、環境にも配慮した。

本賞

清水建設/環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」

バイオ炭混入で脱炭素

木質バイオマスを炭化した「バイオ炭」を混入することで、コンクリート構造物に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート。バイオ炭の混入量の制御によって、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)や、二酸化炭素(CO2)の吸収量が製造時の排出量を上回るカーボンネガティブを実現できる。

バイオ炭は炭素そのものを貯留し、固定している。このため単位重量当たりのCO2固定効率が高い。強度に関しては、建設現場で使われている一般的なコンクリートと同等で、特殊な設備ではなく既存のコンリート工場で製造できる。また、現場でのポンプ圧送に適応する流動性があり、現場打ち施工が可能だ。

本賞

タダノ/フル電動ラフテレーンクレーン EVOLT eGR-250N

充電1回で1日作業・走行

公道走行とクレーン作業を両立したフル電動式のラフテレーンクレーン(RT)として世界初。ディーゼルエンジンの従来機と同等の走行性、クレーン機能を確保した。

1度のフル充電で平均的な1日のクレーン作業と走行が可能。独自開発の電動コントロールユニットを搭載しており、走行用の4輪駆動(4WD)とクレーン用油圧、エアコン、ブレーキコンプレッサー用など通常の電気自動車より多くあるモーターを制御できる。大電流を安全に制御し、大型バッテリーの温度上昇を抑えた。

また電動化で従来機が年間1台当たり平均約27トン排出していた二酸化炭素排出量をゼロに削減。充電時間は急速充電が約2・5時間、普通充電が約8時間。

本賞

ファナック/FANUC αi-D series SERVO

簡単操作・省エネ実現

工作機械を取り巻く環境変化に対応するため、モーター、アンプ、サーボ制御の全てを一新した次世代サーボシステム。高い加工性能を実現するサーボシステムとしての高性能化に加え、小型化や省配線といった使いやすさも向上。サーボシステム全体でのエネルギー損失を従来比約10%低減、機械の省エネルギー化に寄与する。

サーボモーターでは速度検出用エンコーダーの通信速度高速化によるフィードバック遅れ時間の最小化などを実施し、送り精度を改善。国際電気標準会議(IEC)が規定する保護等級「IP67」に標準で対応し、耐環境性能を向上させた。アンプにおいても絶縁劣化検出機能を装備するなど、信頼性も抜かりなく強化している。

本賞

三菱電機/三菱電機 高効率同期リラクタンスモーター RF-SR形「MELSUSMO」

「IE5」達成、永久磁石レス

モーター出力15キロワット以下で国内メーカー初となる産業用モーター国際高効率規格の最高レベル「IE5」を達成した。モーターの回転子鉄心形状を専用設計により最適化し、モーター効率94・7%を実現。省エネルギー化に伴う二酸化炭素(CO2)排出量低減で、2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に貢献する。

省資源化も大きな特徴。IE5達成には、回転子にレアアースを含む永久磁石を使うモーターが多いが、MELSUSMOは永久磁石を使わない構造を採用。この永久磁石レス構造によって、モーターの分解が容易になる。結果、ユーザー自身がベアリングなどを交換できるといった高い保守性につなげた。

本賞

レーザーテック/高輝度EUVプラズマ光源「URASHIMA」

マスク欠陥を高感度で検出

レーザーテックが最先端の半導体加工技術である極端紫外線(EUV)露光用マスクパターンの欠陥を高感度で検出するために自社開発した高輝度EUVプラズマ光源。EUV露光は回路線幅7ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の微細プロセスに対応する。パターン付きマスクの検査を露光光源と同じEUVで行う同社の検査装置「ACTISシリーズ」に搭載される。

高速回転するルツボ内面の溶融スズ(Sn)にレーザーを照射してEUV発光させる独自のレーザー生成プラズマ(LPP)方式により、検査範囲を高輝度で照らし出す。従来機種に比べ検出性能を高め、次世代半導体の微細化プロセスと高NA(開口数)EUV露光に対応する。

日本力賞

オムロン/気象IoTセンサー ソラテナPro

小型・軽量で簡単設置

気温、湿度、気圧、雨量、風向、風速、照度の7項目を1分ごとに観測する気象観測機。直径125ミリメートル、高さ267ミリメートル、重さ約960グラムと小型・軽量で持ち運びやすく、簡単に設置できる。オムロンのセンシング技術と小型にパッケージ化する技術で実現した。

雨量は1時間当たり50ミリメートル、風速は秒速50メートルと、災害リスクが高まる大雨・強風も観測可能。IoT(モノのインターネット)通信機能を内蔵し、観測したデータはクラウド上に保存。ウェザーニューズのアプリ上で、観測機設置場所の気象情報をリアルタイムに把握できる。農業や建築現場、野外イベントなど外環境に左右される幅広い業界での安全対策や生産性向上の需要を見込む。

日立製作所/線形加速器システム OXRAY

多様な照射軌道を選択

ガントリー回転に加え、装置土台部分を水平方向にリング旋回させる2軸の回転運動を採用した。ガントリー回転だけでは実現ができない多様な照射軌道を選択でき、正常な組織への照射を減らし、腫瘍への線量を集中させることを可能にした。さらに旋回機能の工夫によって、従来自社製品と比べて床下深さ約40%の小型化を実現した。

また、照射ヘッドと放射線を遮る複数の特殊な金属板であるマルチリーフコリメーター(MLC)をジンバル機構(首振り機構)に搭載し、患部治療ビームの照射方向を2次元的かつ動的に変化可能とした。こららの機能により、患者への治療時間だけでなく、照射回数や通院回数も減らせるため、患者の生活の質向上に貢献できる。

安川電機/太陽光発電用パワーコンディショナ Enewell-SOL P3A 25kW

自家消費型太陽光200ボルト級最大出力

安川電機の太陽光発電用パワーコンディショナ「Enewell―SOL(エネウェル―ソル)P3A」は、中規模の自家消費型太陽光発電システムに威力を発揮する。系統側への電気の逆流防止に必要な自家消費機能を内蔵することで、200ボルト級では最大級の出力25キロワットを実現した。同P3Aは200ボルト級かつ既存の変圧器に接続可能な配線方式の採用で、柔軟なシステム構成を可能にした。また発熱部品の損失低減設計で信頼性向上を図ったほか、密閉・外部ファンレス構造により重塩害地域への設置にも対応。外部ファンがないためメンテナンス工数の削減や保守費用の低減に貢献する。

ほかにも47デシベル以下の低騒音化など、顧客ニーズに徹した点も見逃せない。

モノづくり賞

SMC/弾性フィンガ MH-X7654

幅広いワークの把持に対応

弾性体ラバーを採用したアタッチメント。加工対象物(ワーク)の形状にならい変形する特徴を持つため、幅広いワークの把持に対応する。把持する部分が0・5ミリメートルと薄く、ワークが番重などの容器に隙間なく並んでいても入り込んで把持。協働ロボットなどが普及する一方、「つかむ」工程に課題を抱える顧客が多いことを受け開発した製品だ。

材質は2種類。米国食品医薬品局(FDA)対応のシリコン素材の食品向け、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)素材を採用した工業品向けを想定したタイプがある。既存のグリッパー製品の多くに取り付け可能。SMCがアタッチメントを提供するのは今回が初となり、シンボリックな製品となる。

ナガセインテグレックス/超精密門型成形平面研削盤 SGD-3012・4012

設置面積従来機の半分

大型の金型や部品を高精度、高効率で加工できる。コンパクト設計の門型成形平面研削盤の同シリーズで、チャック幅を1200ミリメートルと大きくした一方で、独自設計手法「イグタープデザイン」により設置面積を従来機の半分にまで絞り込んだ。平面真直度は1500ミリメートル間で0・28マイクロメートル(マイクロは100万分の1)内と加工精度が高い。砥石(といし)軸の回転や上下・前後動の速度、剛性を大幅に高め、生産性も向上した。

電気自動車(EV)の大型化するモーター部品の金型向けや、シリコンウエハーの大口径化に対応する半導体製造装置の部品向けに販売が好調だ。生産性を高める多数個取りの金型向けにも引き合いが多い。

不二越/高速・高精度協働ロボット CMZ05/ロボット簡単ティーチングシステム Nachi Tablet TP

小型ロボ、安全性など向上

産業用ロボットのベストセラーモデルをベースに開発。高速・高精度の性能はそのままに、安全性や操作性を大きく向上させた小型協働ロボットだ。協働時の最高速度は毎秒1000ミリメートルで、非協働時は同2500ミリメートル。位置繰り返し精度はプラスマイナス0・02ミリメートルで産業用ロボットと同等であり、組み立てなど精度が必要な工程でも使用可能。クラストップレベルの高速・高精度によって生産性向上に寄与する。

「Nachi Tablet TP」はスマートフォンのような直感的な操作性が特徴。ロボットに不慣れな人でも使いこなせるような画面設計やわかりやすいガイドを実装した。初心者のセットアップ時間を約20分から約10分に半減した。

冨士ダイス/高熱膨張ガラス成形用新硬質材料

赤外線透過ガラスレンズ量産

ガラス成形用の金型材料「TR05」により、赤外線透過ガラスレンズを安定的に量産可能。自動車の自動運転用センサーや監視カメラなどに搭載する同レンズの需要が増す中、生産効率を20%改善する。ポイントは熱膨張率。熱による寸法の変化量をガラスと同程度の従来比2倍に引き上げ、プレス成形時に金型材料とレンズの変化量の差で生じるレンズの割れを防止。また、金型からレンズを取り出しやすくなる。鏡面性を示す「Ra」は従来品と同程度の6ナノメートル(ナノは10億分の1)を確保した。産出地が偏在する希少金属(レアメタル)のタングステンやコバルトを使用していないことも特徴。主成分は複数国に産地があり、地政学リスクを受けにくい。

中堅・中小企業賞

相澤鐵工所/全自動シャーリングシステム ARS-1020DA

9㎜厚鋼板切断初の無人化

厚さ9ミリメートルの鋼板を全自動で切断するシャーリングシステム。従来は厚さ6・5ミリメートルまでしか全自動機は対応していなかったが、重ねた鋼板を一枚ずつ分離する部分に新たな機構を導入することで実現した。9ミリ厚に対応した全自動機は海外メーカーも含めて初めてという。

鋼板は表面保護の油で板同士が密着してしまい、1枚ごとの分離が障害になる場合があった。このため手作業で板間にエアを入れて剥がすなど、重い厚板では作業者の負担になっていた。

同社は鋼板を吸着するユニットを前後で独立させ、時間差を設けて吸引する機構を初めて採用した。油で密着している鉄板を1枚ごとに分離し、完全な無人化を実現した。

(2024/1/4 05:00)

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