障がい者をIT技術者に育成 フリースタイル、賃金引き上げ人材呼び込む

(2023/10/3 12:00)

情報システム開発を手がけるフリースタイル(名古屋市中区、青野豪淑社長)は、障がい者をプログラマーに育成して登用する取り組みに力を入れている。就労支援施設に通う障がい者をフリースタイルが育成し、業務を委託している。技能や業務効率は同社の技術者に劣らないという。障がい者は軽作業に携わることが多く、賃金水準は低くなりやすい。プログラマーにすることで所得を高めると同時に、不足するIT人材を確保する。

  • フリースタイルは就労支援施設に通う障害者をプログラマーに育成して登用する取り組みに力を入れている

名古屋市中川区にある就労支援施設「フローラ」を訪れた。所内では精神疾患を抱える10人ほどの通所者が黙々とプログラミングに打ち込んでいる。ソフトウエアの機能を定義する詳細設計からプログラミング、正常に稼働するかテストする流れまで一貫して担う。彼らはJavaやJavaScript、PHPといったシステム開発の実務で使うプログラミング言語を使いこなす。「技術や時間当たりの生産性はわが社の技術者と全く変わらない」。フリースタイルの加藤直人システム開発事業部部長は彼らの働きに感嘆する。

フリースタイルは2017年から複数の就労支援施設向けにプログラミング教育を提供してきた。フローラもその一つ。22年6月には業務に従事できる技能を持つ人材が育ってきたとして、両者はシステム開発の業務委託契約を締結。当初は6人だった人材は約10人に増えた。現在も、日々新たなプログラマーを育てている。

夜間や休日の対応、顧客との窓口業務といった精神的に負荷がかかる仕事はフリースタイルが担当する。だが、詳細設計や開発チームのリーダーはフローラ内で完結する。「彼らが働きやすいような体制にする一方で、仕事の発展性も考慮している」(加藤部長)体制だ。

この取り組みの欠点を挙げるとすれば、労働時間に直結する通所時間の短さだ。先の施設では平日の10時半から15時半が通所時間で、1日にシステム開発に費やせる時間は1人当たり4時間程度。だが、開発期間や人員を調整すれば支障はないという。

  • 障がい者のプログラマーが開発した、来場者数がキリの良い人数に達したときに会場内に知らせる機能

障がい者の身になって考えると、自立した生活を送れるほどの賃金を得られる点は魅力的。一般的に施設内では軽作業に従事するが、単純作業のため賃金が安くなりやすい。プログラミングができるようになると「わが社の技術者と同じ水準で報酬を支払っている」(同)ため賃金は大幅に上がる。できる仕事の幅も広がる。

通所者は半年ほどの教育でプログラマーとして一人前になれる。教育課程は同社が作成したもので、未経験者に教える内容と変わらない。身体障がい者であっても、パソコンへの入力が可能なら問題ないという。すでに同社は、個人からの依頼を受けてプログラマーに向けて育成を進めている。

「同様の取り組みがIT業界に広がっていってほしい」。加藤部長は願う。不足するIT人材を確保すると同時に、働きたい障がい者の雇用を創出する観点からも取り組みが広がっていくことが期待される。

(2023/10/3 12:00)

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