[ オピニオン ]
(2015/11/23 05:00)
安倍晋三首相の指示で検討が進む携帯電話やスマートフォンの利用料金の引き下げに対して、産業界には賛否両論がある。もちろん私企業が経済合理性に基づいて設定する料金に政府が口を挟むのは望ましくない。しかしスマホをインフラと考えれば、料金のあり方の議論が深まることは意味がある。これを機に事業者は機器とサービスの料金の区分や、低価格プランを含む選択肢を増やすことを検討してもらいたい。
テレビ、電話、パソコン、新聞、オーディオ機器などの機能を兼ねるスマホに対し、単身世帯なら現在の料金を高くないと考える人が多いだろう。一方でスマホは個人の占有を前提とした“個電”である。小学生が親に対して「持っていないと仲間はずれにされる」と購入を要求することも珍しくない商品・サービスとして、現在の料金が妥当かどうか。
また、ごく一部かもしれないが低所得者や生活保護世帯の中に毎月、食費に匹敵するほどの額の通信費を支出している例もあると聞く。こうしたケースには不健全さを感じずにはいられない。
消費者が価値に見合う代価を払うのは当然とはいえ、携帯の通信費は料金プランが頻繁に変わり、また内訳がよく分からないのが実情だ。そうした契約の妥当性の判断を「消費者の賢さ」だけに求めて、こと足りるだろうか。
実際には顧客は、料金を高いと感じてもなかなか契約を打ち切れない弱い立場にある。なんらかの配慮はあるべきだろう。長期契約者から得た利益を新規顧客獲得の報奨金にするという業界慣習を是正し、端末を長く使うことや、中古端末の流通を広げることも検討に値しよう。
スマホが社会の効率化、変革を推進している現状を大いに歓迎する。すでにビジネスでは欠かせない存在であり、遠くない将来、水や電気などのライフラインに準ずる位置づけになるだろう。
こうしたインフラは、基礎的な利用に限っては安価であることが第一だ。事業者は低料金のメニューを増やし、安価で安心して利用できるよう努めてもらいたい。
(2015/11/23 05:00)