[ オピニオン ]
(2017/8/25 05:00)
個人データのビジネス活用を促す取り組みとして、政府のIT総合戦略本部を中心に「情報銀行」構想が検討されている。産業界からの要望を受けたものだが、将来のあるべき姿や課題を国民にも分かりやすく伝えながら議論を深めてほしい。
情報銀行は個人が自らのパーソナルデータを信頼できる認定機関に預けて管理し、本人の意志に基づいて、データの流通・活用を促進する仕組みだ。
対象となるデータはスマートフォンやポイントカードなどの利用から得た位置情報や購買情報といった生活履歴や健康データなど広範にわたる。一般事業者がこれらをマーケティングなどに活用する場合には利用料が必要。そこから得た収益は金銭やポイントとして個人に還元される。
もとより個人データを利活用するにはプライバシー保護が欠かせない。だが、本人の同意があればデータを匿名化しなくても流通できるようにするのが情報銀行の考え方だ。例えば自分の自動車運転履歴を情報銀行に預けておき、保険会社が照会を求めてきたら本人の合意の元、無事故ならば保険料を安くするといったことも可能となる。
情報銀行が検討される背景には、個人データがなし崩し的に使われている現状への危機感もある。産業界からは「GAFA(ガッファ)が独り勝ちする世界にはしたくはない」といった声もある。
GAFAとは米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの総称。スマホなどで提供される多様なサービスを利用する際には、個人データを提供せざるを得ない状況にあり、どのように利活用されているかは見えない。
こうした状況に対して、欧州連合(EU)は「一般データ保護規則」を定め、個人データは本人にコントロールする権利があることを明確化する。2018年から施行する。
日本でも議論が始まったが、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)の大合唱の中で議論の焦点が見えにくい。国民的な議論が急がれる。
(2017/8/25 05:00)