[ オピニオン ]

【電子版】論説室から/トランプ氏が初来日、日本は自由貿易の重要性訴え続けよ

(2017/10/19 05:00)

トランプ米大統領が11月5日に就任後初めて来日し、翌6日に日米首脳会談が予定されている。北朝鮮による拉致、核・ミサイル問題に対する日米間の強固な同盟関係を国際社会に訴えることが主要な議題となる見通しだ。一方、通商問題についても話し合われる可能性が高い。10月16日の日米経済対話で、ペンス米副大統領は日米間の自由貿易協定(FTA)締結に強い意欲を示した。トランプ大統領がFTAに言及して対日貿易圧力を強めるのか、日本政府は警戒感を強めている。

日本としては、米国を除く環太平洋連携協定(TPP)署名11カ国(TPP11)による同協定の大筋合意、早期発効を実現することが当面の課題となろう。11カ国は11月10日にベトナム・ダナンで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での大筋合意を目指している。日本はこのTPPを市場開放の上限であることを早期に米国に発信することが肝要ではないか。米国は韓国とのFTA再交渉や北米自由貿易協定(NAFTA)交渉を抱え、日本の交渉順位は相対的に低いとされる。日本政府はこの時間的猶予を活かし、TPP11のルールづくりを急ぐことから取り組むべきだろう。

興味深い分析がある。政策研究大学院大学の川﨑研一特任教授の分析によると、日本は米国抜きでもTPP発効による経済効果はあまり変わらない。米国を含む12カ国でTPPを発効した場合、日本の実質国内総生産(GDP)成長率は1.37%押し上げられるが、米国抜きの11カ国でも押し上げ効果は1.11%を見込む。仮に米国が興味を示す日米FTAの場合でも日本の成長率は1.07%押し上げられ、一定の経済効果を期待できる。

他方、米国は日米FTAで0.38%しか成長率は押し上げられないと分析。米国がTPPに参加した場合の押し上げ効果0.72%から半減するという。「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領が真の国益を追求するよう願わずにはいられない分析結果だ。

今回の日米首脳会談で、トランプ大統領は日米FTAに言及するのか、大統領の言動は見通しにくい。2018年に中間選挙を控える中、連邦法人税率を35%から20%に引き下げる税制改正案などが頓挫するような事態となれば、対日圧力が一気に強まることも想定される。その場合、日本の農畜産分野が標的になるとみられる。例えば牛肉。経済連携協定(EPA)を締結している豪州に対し、TPP離脱を表明した米国は関税率の点でますます厳しい競争にさらされる。すでに米国は日本が課している米国産冷凍牛肉への緊急輸入制限措置(セーフガード)の緩和を求めており、TPP11のルールよりも厳しい市場開放を求めてくる可能性は否定できない。

ただ、自動車(乗用車)の輸入では日本は関税率ゼロなのに対し、米国は2.5%の関税を課している。日本は10月16日の日米経済対話で、輸入車に対する排ガス検査手続きの緩和で譲歩しているのだから、日本政府は不公平な関税について「言うべきことは言う」姿勢で米国との交渉に臨むことが期待される。また米国の国益にかなう同国のTPP復帰を粘り強く訴え続けていくことも必要だ。

たとえ淡い期待であっても、自由貿易圏拡大の旗を降ろすことはできない。

(神崎正樹)

(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)

(2017/10/19 05:00)

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