[ オピニオン ]
(2017/12/7 05:00)
産学連携で企業が注目するのは、拠出した資金に見合うだけの研究成果を生み出せるかという点である。この課題に対し、文部科学省が昨年スタートした大型プロジェクトが一つの解になるかもしれない。
このプロジェクトは、科学技術振興機構(JST)を通じて進める「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム」(略称=オペラ)。1社当たり年1000万円の資金を10社規模で集め、文科省から同額を得る事業設計が最大の特徴だ。
従来の共同研究は、大学の1教員と企業の1部門で進められ、1件数百万円という規模が一般的。ただ、成果が出なくても互いに曖昧なままに終わり「産学連携は効果なし」という結論になりがちだった。
一方、オペラの研究期間は5年間で、1社に5000万円の拠出を求める。この規模だと、企業側は提案された内容を吟味し、全社で参画を判断する必要に迫られる。大学側も進捗(しんちょく)の把握や研究成果の創出、知的財産の管理に責任を持たねばならない。この産学双方の緊張感が、成果を導く原動力となる。
企業が多額の資金を出すのは、人工知能(AI)やビッグデータなどの進展で、これまでの事業構造が覆される危機感があるためだ。大学のシーズを活用して新たな事業を創出したいという企業ニーズは強い。
2年目は3件が採択され、東京工業大学は建造物大型部材の安全性技術や評価・標準化、信州大学は埋込型・装着型デバイスの医療機器承認取得の支援、大阪大学は量子制御技術を応用した半導体誤作動の防止やがん患者の治療に取り組む。
共同研究費の一部を博士課程の学生の人件費に充てる試みもオペラの特徴。初年度に採択された名古屋大学や東北大学で、博士学生に給与を支給して雇用する制度を始めた。これにより企業が求めながらも、従来は曖昧だった守秘義務や研究進捗管理が進むことが期待される。
近年、1対1の共同研究も大型化が進んでいる。オペラの制度設計が有効かどうか、成果が注目されそうだ。
(2017/12/7 05:00)