社説/東芝機械の買収防衛策 株主は企業価値の視点で判断を

(2020/2/20 05:00)

東芝機械が検討する買収防衛策の是非が3月27日の臨時株主総会で判断される。東芝機械の企業価値、株主価値を向上させるのは、どちらの提案か。株主の判断に注目したい。

同社は旧村上ファンド系投資会社の子会社シティインデックスイレブンス(CI11)から、TOB(株式公開買い付け)を実施され、それに反対の意見を表明している。さらに、村上ファンド系以外の株主に新株予約権を無償で割り当てる、買収防衛策の導入と発動の可能性を表明していた。緊急時の買収防衛策と言われるものだ。

TOBは当初3月4日で終了予定だったが、CI11が4月16日まで延長を決めた。延長しなければ東芝機械は、取締役会決議で防衛策を発動する可能性もあっただけに、回避できたのは株主にとって良かった。

今後は株主が、東芝機械の現経営陣が示した中期経営計画などを見て、防衛策導入の提案について議決権を行使する。最終的な判断は、どちらの主張が、東芝機械の企業価値を向上させ、株主価値を上げることができるかにかかっている。

東芝機械は子会社の売却などで、内部留保を抱えているのは事実。変動の大きい工作機械、射出成形機業界で一定の手元資金が必要という同社の主張も理解できる。ただ、成長への投資や事業再構築が遅れ、株価純資産倍率(PBR)が1倍を割り込むままにしていたのが、アクティビスト(もの言う株主)につけ込む隙を与えた。

一方のCI11は、株主資本利益率(ROE)重視や自社株買いでの株価引き上げを求める。欧米ではアクティビストが、企業に厳しい株価上げを求めるのは当たり前で、CI11の行動は何ら不当ではない。ただ、昨今のアクティビストは、企業の事業を精緻に調べ、具体的な事業改善提案まで行う事例も多い。長い目で見て、株主価値を上げられるからだ。CI11のROEと短期の株価向上の主張は、古いやり方と言えなくもない。

総会まで1カ月あまり。株主が判断を下せる十分で適切な情報の開示を求めたい。

(2020/2/20 05:00)

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