社説/小野薬品を提訴へ 産学連携促進の教訓としよう

(2020/6/11 05:00)

大学と企業間の特許利用のあり方が問われる事案だ。産学連携を加速する上でも、対立の経緯と行方を教訓としたい。

本庶佑京都大学特別教授が、がん免疫治療薬「オプジーボ」関連の特許料の分配を不服として、小野薬品工業を大阪地裁に近く提訴すると表明した。本庶特別教授は2018年のノーベル賞を受賞した。世界で多くの命を救った功績に関し、発明者と医薬メーカーが対立するのは残念だが、双方の主張は平行線をたどっており、司法の裁定に委ねるしかないと判断した。

今回の提訴は、米メルクとの間の特許紛争で得た和解金と特許使用料の分配で、本庶氏が当初聞いた分配率(40%)と実際の分配(1%)にかい離があり、不当だと主張。本庶氏側は226億円の支払いを求めている。両者はオプジーボの特許使用料そのものでも対立しており、新たな紛争の可能性もある。

本庶氏と小野薬が特許を共同出願したのは2003年。04年の国立大学法人化で、大学教員の研究成果による特許は大学帰属へと移行した。知財や契約実務に詳しくない教員ではなく、大学が契約の当事者になれば、今回のような契約後の紛争リスクは軽減できるかもしれない。

一方、小野薬が成功確率は千に一つというハイリスクな新薬開発のなかで、契約にない対価の引き上げを求められても応じられないという立場をとるのも理解できる。

企業にとって、外部の力を成長にいかす、オープンイノベーションが不可欠な時代。それだけに、大学やベンチャー・中小企業などと知財の取得や使用について、事前に双方が合意し取り決めることが重要となる。ただ公正取引委員会の調査では、不平等な契約を強いられる事例はまだまだ多いという。経済産業省と特許庁は近く、オープンイノベーションを促すためのモデル契約書を作成し、規模が異なる事業者間の契約のあるべき姿を示すとしている。

今回の事案を産学連携、オープンイノベーションが成功する条件を再考するきっかけとしてもらいたい。

(2020/6/11 05:00)

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