(2022/11/28 05:00)
政府はスタートアップ育成に向けた5カ年計画を28日に決定する。原案によると、スタートアップへの年間投資額を現在の8000億円規模から2027年度に10兆円規模へと10倍に引き上げる。将来、スタートアップは10万社、現在6社のユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)は100社の創出を目指す。「日本をアジアのスタートアップハブにする」(岸田文雄首相)ことで日本経済の潜在的な成長力を引き出したい。
政府は新たな価値創造に向けて、中小企業の規模拡大よりも新規創業を重視する。企業の参入率と退出率の合計(創造的破壊の指数)が高い国ほど経済成長率は高い。日本の開業率は欧米より低く、産業の新陳代謝が遅れていた。成長分野の育成は賃金上昇や女性活躍の機会が増える効果も期待できる。政府の5カ年計画の後押しにより、日本経済の活性化と経済好循環につながることが期待される。
政府は5カ年計画で3本柱の取り組みを一体で行う。第1はスタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築。起業経験者が助言役となる支援事業について、育成規模を年間70人から5年後に500人に拡大する。またシリコンバレーなどに起業家育成の拠点を整え、5年間で1000人規模の若手人材を派遣する目標も掲げる。
第2は資金供給の強化などで、個人が保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合、優遇税制を適用する。第3はオープンイノベーションの推進。大企業からスタートアップへの投資を促す狙いで、スタートアップの既存発行株式の取得に対しても優遇税制を講じることが原案に盛られた。5カ年計画は2023年度に始動し、実質的なスタートアップ元年として取り組みを推進したい。
デジタル変革(DX)や脱炭素といった社会的課題の解決に向け、スタートアップの存在感が高まることが期待される。例えば大企業の組織力とスタートアップの革新的な発想を融合できれば、日本経済の再生につながるイノベーションが誘発される効果も期待できるはずだ。
(2022/11/28 05:00)
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