来日前教育で橋梁修繕の即戦力に ヤマダインフラテクノス、ベトナムに技能者育成学校

(2024/6/11 12:00)

ヤマダインフラテクノス(愛知県東海市、山田博文社長)は、自社開発した環境にやさしい橋梁の補修方法「循環式ブラスト工法」の普及に力を入れるが、現場の技能者不足が課題となっている。そこで外国人の技能実習制度に着目し、来日する前に自国で同工法の施工や日本語教育を実施する技能者育成学校の運営を始めた。技能実習生が正しく活躍できる仕組み作りで、人手不足の課題解決を目指す。

  • 学校内に設置した橋梁模型では、塗装と塗料を剥がすブラスト処理を繰り返し訓練できる

ヤマダインフラテクノスは主に橋梁の修繕業務を手がける。自社開発した循環式ブラスト工法は塗料を剥がすブラスト処理において、耐久性が高い金属系の研削材を使用し、研削材を循環させ再利用することで塗料カスのみを廃棄物として選別回収できる。研削材も廃棄物となってしまう他の工法と比べ廃棄物の量を削減できるという、環境に配慮した工法だ。2016年には同社主導で一般社団法人「日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会」を設立するなど、同工法の普及に力を注いでいる。

だが、人による作業が必要なため人手不足は深刻な問題だ。「30年後を見据え、日本人以外の人材を正しく活用できる制度や仕組みを今から整える必要がある」と考える、山田翔平専務が着目したのは技能実習制度だ。本来は外国人が日本で技能を習得し、帰国後は身に付けた技能を自国で生かしてもらう制度。だが実態は「安い労働力として扱い、教育もせず雑務しか与えられないため、技能伝承もできていない」(山田専務)。山田専務は「まずは企業が『技能実習生は安い労働力』という考え方を改めなければならない」と警鐘を鳴らす。

  • 座学ではKY活動や、現場で必要な書類の記入方法も学ぶ

そこで同社は、来日前に自国で基礎的な教育を受けられる新たな仕組みとして、ベトナムで「ブラスト技能者育成学校」を23年に開校。学校には同工法の実機を持ち込み、ブラスト処理と塗装を繰り返し訓練できるように橋梁の模型も設置した。座学では日本語教育と安全教育、日本式の危険予知(KY)活動も学ぶほか、実際の業務で必要な書類の書き方や機械のメンテナンスまで勉強できる。

卒業生は来日後、同工法の即戦力として「しっかり出来高を上げられる人材となり、企業はより多くの利益を得られる」(同)。それを、技能実習生の賃上げにつなげてもらう狙いだ。訓練学校の運営を通して、環境にやさしい同工法を普及させるとともに、長い目で日本とベトナムの相互利益の関係構築に取り組む。

(2024/6/11 12:00)

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