社説/揺れる大国経済(上)中国の減速を前提に事業運営を

(2022/8/24 05:00)

中国政府が自国経済の回復力の鈍さに危機感を示している。今年3回目となる利下げに踏み切り、企業の資金需要や個人消費の喚起につなげようと躍起だ。秋の共産党大会で異例の3期目入りを目指す習近平国家主席だが、ゼロコロナ政策への拘泥が完全に裏目に出てしまった。足元は堅調な日本の対中輸出にどのような影響を及ぼすのか、今後の動向を警戒したい。

中国人民銀行(中央銀行)は政策金利である最優遇貸出金利(LPR)の1年物の金利を0・05%下げて3・65%に、住宅ローンなどの指標となる5年物も0・15%引き下げて4・30%とした。二つの金利の引き下げは7カ月ぶりで、景気刺激への強い姿勢が示されたと言える。

ゼロコロナ政策による断続的なロックダウン(都市封鎖)と行動制限は個人消費の減退を誘発し、サプライチェーン(供給網)の混乱に電力不足も重なって、企業の生産活動は一定の制限を余儀なくされている。他方、バブル抑制と格差是正のために2020年以降に講じた不動産規制は緩和や利下げに政策転換しているものの、バブル退治の影響は今も尾を引き、地方経済は疲弊している。若者の失業率も深刻化しており、6月の16―24歳の失業率は19・3%と過去最悪を更新した。

中国は22年の実質成長率の目標を「5・5%前後」とするが、4―6月期は0・4%と実質的なゼロ成長で、通年も4%台にとどまるとの有識者の見方が多い。状況によっては2%台との指摘もある。武漢のロックダウンでコロナ禍を収束させ、21年に8・1%成長を実現した成功体験に拘ってきたものの、感染力の強いオミクロン株の流行がゼロコロナ政策の限界を露呈したと言える。

中国の7月の消費者物価指数はウクライナ情勢を受け、前年同月比2・7%の上昇と2年ぶりの高水準にある。今回講じた利下げ効果も物価高に相殺されかねず、先行き不安から資金需要の目立った回復は期待しにくい。最大の輸出相手国・中国の減速を前提とした事業運営が日本企業に求められつつある。

(2022/8/24 05:00)

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