社説/インバウンド回復途上 中国伸び悩み、量より質重視を

(2023/7/21 05:00)

インバウンド(訪日外国人)需要は徐々に回復しているものの、コロナ禍前に最多だった中国からの客数が伸び悩んでいる。中国政府が訪日旅行を規制しているほか、国際便の回復も遅れていることが背景にある。日本政府はインバウンド1人当たりの消費額を引き上げる計画を掲げる。インバウンドは量より質を重視し、サービス業の深刻な人手不足にも対応したい。

日本政府観光局によると、6月の訪日外国人客は207万3300人で、コロナ禍前の19年6月の72%まで回復した。国別では中国が88万人と最多だが、19年同月比の回復率は24%にとどまり、韓国の89%、台湾の84%などと比べて見劣りする。米国は129%、豪州は114%とコロナ禍前を上回る。

中国からの訪日が伸び悩んでいるのは、中国政府による規制が大きく影響している。日本行きの団体旅行・パッケージツアー商品の販売を中止しているほか、個人旅行も訪日観光査証(ビザ)の取得が難しいとされる。地域によってはビザ申請は富裕層に限定されるという。また中国政府が訪日を推奨していないことを国民が忖度(そんたく)している側面もあるとみられる。

中国政府は2月以降、団体旅行解禁の対象国を段階的に増やしてきたが、日米韓は解禁されていない。政治的な思惑が観光にも影響しているのは残念だ。

日中間にはビザ申請をめぐる摩擦もある。中国はコロナ禍前、滞在15日以内の中国旅行はビザ取得を免除していたが、この措置は停止されたままだ。中国政府は、日本が短期滞在でも中国人にビザ取得を求めている点を指摘し、見直しを求める。だが不法就労が増える懸念から日本は見直しに慎重で、日中間の往来が回復する兆しはない。

日本政府は観光立国推進基本計画の中で、25年までにインバウンド1人当たりの消費額を20万円(19年は15・9万円)に引き上げるほか、滞在日数を2泊(同1・4泊)に増やす目標を掲げる。インバウンドは量より質を重視し、サービス業の人手不足に対応しつつ、地方創生につなげることが求められる。

(2023/7/21 05:00)

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