社説/知的財産の流出 捜査機関とも連携し管理徹底を

(2023/12/27 05:00)

「イノベーションボックス税制」の創設が2024年度与党税制改正大綱に盛り込まれた。国内の研究開発で得た知的財産所得を対象に、法人税を軽減する優遇措置を講じる。企業の研究開発を後押しする効果を期待したい。ただ知的財産が不正に流出した事件が国内で散見される。企業の利益を損なうだけでなく、経済安全保障の観点から見過ごせない。企業は研究開発を推進する一方で、あらためて社内管理の徹底を図るとともに、捜査機関と密に連携した流出防止体制も構築したい。

6月に産業技術総合研究所(産総研)の研究員が研究データを中国企業に漏えいした事件が、12月にアルプスアルパインの元社員がデータを不正に取得した事件が明らかになった。それぞれ中国籍の男が逮捕されている。いずれも逮捕に至るまでに2年を要しており、企業単独では十分な対策が取り得ないことを示していると言える。

中国は国産化を目指す戦略産業をリストアップし、生産のボトルネックとなる技術の取得に号令をかけているとされる。

知的財産の流出防止において、まず社内管理の徹底が重要なのは言うまでもない。重要データが収められたサーバーにアクセスできる人間を一部に限定する、海外進出の際は重要技術は国内に残す、現地での納入先は絞り込む、契約に厳密な条件を付けるなど。ただ、それで防ぎ切れるものではない。

職業選択の自由が憲法で規定されている以上、転職を妨ぐことはできない。労務管理において国籍差別はできない。コロナ禍を機に副業・兼業を認める企業も増えている。流出の危険性は常にある。公安調査庁は22年4月に専門部署を設け、全国で知財流出やサイバー攻撃など経済安全保障に関するセミナー・シンポジウムを開いているほか、相談や講演依頼の窓口も設けている。こうしたところで必要な知識を蓄えて社内管理を徹底し、政府や捜査機関とも連携することが肝要だろう。企業は知財流出のリスクを最小限に抑え、安心して研究開発に打ち込める体制を整えていきたい。

(2023/12/27 05:00)

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