社説/きょう春闘スタート 脱デフレへ価格転嫁を商習慣に

(2024/1/24 05:00)

経団連が24日に労使フォーラムを開催し、2024年の春季労使交渉(春闘)が事実上スタートする。前年の回答を上回る賃上げ率を実現し、デフレ脱却への道筋が付くと期待したい。中小企業の価格転嫁に大企業などの発注企業がどこまで応じるかが今春闘を大きく左右する。発注企業には全面的な協力を求めたい。他方、25年以降の持続的な賃上げに向け、労使は生産性の向上や働き方改革などについても議論を深めてほしい。

岸田文雄政権は今春闘をデフレ脱却に向けた千載一遇のチャンスと位置付ける。春闘直前の22日に政労使会議を開く念の入れようで、焦点となる中小企業の価格転嫁を「新たな商習慣」とするよう労使に訴えた。経団連は23年の賃上げ率3・99%を上回る回答を目指し、価格転嫁も推進する姿勢を示す。中小企業の賃上げ分が適切に取引価格に上乗せされるか注視したい。

中小企業は人材の確保とつなぎ留めを目的にやむを得ず「防衛的賃上げ」を行っている。だが限界がある。東京商工リサーチが23年12月に行った調査で、24年春闘の賃上げ率が前年を超えそうな中小企業が1割だったのが気がかりだ。賃上げ分の価格転嫁率は3割程度にとどまっており、この改善なしに大幅な賃上げは期待できない。

公正取引委員会は23年11月、中小企業の賃上げ分の価格転嫁を促す指針を公表し、公正な競争を阻害する恐れがある場合は独占禁止法などで厳正に対処するとした。価格転嫁に応じない発注企業の中には、受注企業から転嫁の要請がなかったことを理由にする企業もある。要請の有無によらず、価格転嫁を商習慣化する節目の春闘としたい。

他方、中小企業は生産性向上への取り組みや新たな価値の創出により、賃上げの原資を確保する自助努力も求められる。

労使は25年以降の持続的な賃上げも見据え、生産性向上や労働市場改革の議論も深めたい。学び直し(リスキリング)や日本型職務給の導入、成長分野への円滑な労働移動は、構造的な賃上げを実現し、分厚い中間層の形成に結ぶ付くはずだ。

(2024/1/24 05:00)

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