社説/日銀決定会合(上)「金利ある世界」へ企業は変革を

(2024/3/19 05:00)

日本経済が歴史的転換期を迎えている。バブル崩壊後の「失われた30年」で凍り付いていた賃金・物価・金利がようやく動き出し、新たな成長軌道に移行しつつある。小さなパイを奪い合った低成長のデフレ経済とは完全に決別し、パイ自体を拡大させる経済を早期に取り戻したい。企業はこれまでの現状維持や縮小均衡から拡大均衡への意識改革を迫られる。企業価値向上に向けた変革を急ぎたい。

2024年春季労使交渉(春闘)が日本経済を転換させる起点となる。連合によると、平均賃上げ率は1回目の回答集計で5・28%と33年ぶりの高水準だった。長く1―2%台に停滞していた賃上げ率は23年(第1回回答)に3・80%に上がり、24年はこれを大幅に上回る。デフレ脱却への千載一遇の機会に労使が呼応したと評価したい。

日銀は2%の物価目標を安定的に達成できる環境が整ったと判断し、19日に金融政策を修正すると市場は織り込んでいる。16年に導入したマイナス金利政策や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を解除し、政策金利を17年ぶりに引き上げるとみている。

当面は「緩和的な金融環境」を維持するものの、資金調達コストの増加や円高が想定される「金利のある世界」は、企業に一段の収益構造の強化を迫る。企業は賃上げを継続しつつ、企業価値を向上させる成長投資を加速したい。海外投資家は停滞していた日本経済の変化に期待し、足元の株高につながっている。自社で完結しない事業領域に踏み込むTOB(株式公開買い付け)なども意欲的に行い、縮小均衡から拡大均衡へと事業戦略を転換してほしい。

日本の国内総生産(GDP)は23年にドイツに抜かれ、世界4位に転落した。低成長とデフレの「失われた30年」はコストカット経済に陥り、非正規雇用者は労働者の4割を占める。22年の平均賃金は38カ国中25位まで沈んだ。円の購買力も1ドル=360円だった固定相場時代とほぼ同水準に落ち込んでいる。「安いニッポン」の汚名を返上し、局面変化の24年としたい。

(2024/3/19 05:00)

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