社説/「非正規」春闘 高い賃上げ率で「好循環」実現を

(2024/3/25 05:00)

全労働者の4割弱を占める非正規雇用の賃上げを進めたい。連合によると、2024年春季労使交渉(春闘)の2回目の回答集計で、正社員の平均賃上げ率は5・25%だった。非正規は正社員を上回る6%台であり、格差是正と賃金底上げに向けて一歩前進と評価したい。だが、これだけでは不十分だ。賃金と物価がともに上昇する好循環を定着させるため、非正規の正規化や同一労働同一賃金の周知徹底などの対策を加速したい。

連合によると、正社員の賃上げ率5%台は33年ぶりの高水準で、日銀は春闘を評価して金融政策の正常化に踏み出した。デフレからの完全脱却に向けて労使が共闘し、連合の最終集計でも5%台の水準を維持したい。

ただ実質賃金が増加に転じるには、非正規を含む労働者全体の賃金の底上げが欠かせない。連合が1回目の回答集計で非正規の賃上げ率を月額6・75%と公表している(2回目の集計では非公表)。流通・外食産業などが人手不足対策として意欲的な賃上げを決断し、正社員よりパートの方が賃上げ率が高い回答が相次いでいる。非正規の賃上げの勢いも継続させ、個人消費の増加を起点とする経済好循環を回すことが求められる。

政府は、主婦らパートの給与が一定額を超えても、新たに発生する社会保険料の負担を軽減する措置を23年10月から講じている。いわゆる「年収の壁」対策で、非正規の賃上げを促した側面もあったと評価したい。経団連も今春闘での経営側の指針で、非正規雇用の待遇改善を進める必要性を示していた。

非正規の給与は正規の7割程度とされ、一段の処遇改善が求められる。政府の全世代型社会保障構築会議は24年度の取り組みとして、同一労働同一賃金ガイドラインの検証と見直し、非正規の待遇改善に向けた企業の取り組み状況の検証などを挙げており、企業には積極的な情報開示が求められる。契約から5年を超える有期雇用契約を無期雇用契約に転換する「無期転換ルール」も周知徹底したい。生活基盤の安定化は、少子化対策としての効果も期待できよう。

(2024/3/25 05:00)

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