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【電子版】論説室から/原発事故の処理費用負担を考える

(2017/1/12 05:00)

福島第一原子力発電所の事故処理費用の一部を新電力に負担させる案が16年12月、政府の会議で示された。原発で作った電気を購入していない新電力が処理費用を負担するというなら、電気を選べる電力自由化との整合性はどうなるのか。

自由化市場なので、安い電気を売りたい新電力は、安い電気を作る原発から調達できる。安い電気を使いたい工場も、原発の電気を扱う新電力から購入できるのが自由化の姿だ。事故処理費用も「原発の電気」を選んだ新電力、工場、家庭が負担するなら納得感がある。

政府の会議は過去にさかのぼり、原発の電気を購入していた家庭などに負担を求めるという。「自由化前の話」ということなのだろうか。

新電力にも負担が広がると、家庭の電気代に月18円の上乗せになると試算する。「上乗せ」と言えば、再生可能エネルギーの普及を支える「賦課金」もある。賦課金は、再生エネ発電所から電気を電力会社が買い取るための費用に充てられている。毎月の電気代から徴収されるので「国民負担だ」と批判されてきた。

16年度に家庭が支払う賦課金の平均は月675円。事故処理のために上乗せされる額の方が安いが、賦課金と同じ国民負担だ。

再生エネの固定価格買い取り制度には、電力を多く使う製造業は賦課金の支払いを減らせる減免制度がある。事故処理の負担にも減免があるのだろうか。

そもそも事故処理の負担と、再生エネの普及のための負担、どちらが支払う価値があるのか。再生エネの賦課金は13年から6倍に膨らんだ。事故処理の費用はこれ以上増えないのだろうか。もし世界最大級の柏崎刈羽原発で重大事故が起きると住民40万人の避難が必要と試算されている。米作に被害が及ぶと、新潟県にとって大打撃だ。事故処理費用は巨額になるだろう。再生エネはコスト低減が進んでいる。その証拠に電力会社が買い取る価格が下がっている。賦課金の上昇も抑えられるだろう。

原発事故の処理費用は、原発の運転であがった収益からの負担するのが、わかりやすいのは確かだ。安全に万全を期して再稼働させるというが、もっとも安全なのは再生エネ。

エネルギー問題をめぐる疑問を並べてみた。国民負担や安全性を考えて再生エネを普及させた方が良いと、あらためて思った。

(編集委員・松木喬)

(2017/1/12 05:00)

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