社説/内航海運の船員高齢化 事業基盤強化へ荷主側も配慮を

(2022/8/30 05:00)

国内沿岸で資源や食料品、日用品などを運ぶ内航海運で、船員不足と高齢化が深刻だ。長距離トラックドライバーの不足が叫ばれる中、環境に優しく、国内の貨物輸送の約4割を担う物流の大動脈である内航海運の危機を放置はできない。

国土交通省によると旅客船を含む内航海運の船員数は2020年に2万8000人強とピーク時の70年代より半減。さらに問題なのは約半数が50歳以上という年齢構成だ。バブル崩壊後の景気低迷もあり、船数が減ったり採用を抑制したりした結果、30―40代の船員が不足する。

国交省によると、ここ10年ほどは官民挙げての対応などが功を奏し、海上技術学校などの卒業生を中心に内航海運への就職は増加傾向。一方で30歳未満の内航船員の定着率は20年に78・4%と15年より6・6ポイント低下するなど定着率の低さが課題だ。

背景にあるのは3カ月乗船して1カ月休暇など長期間の乗船や長時間労働。船員の働き方と若者の意識のズレだ。また狭い船内で24時間過ごす中、高年齢者の多い船員たちになじめず辞める人も多い。若者にとってスマートフォンがつながるかどうかも重要だという。五つの海運組合で組織する日本内航海運組合総連合会(東京都千代田区)の担当者は、今の若者は給与だけでなく「居住や生活環境も重視しており、改善しないと引き留めは難しい」と指摘する。

この状況を変えようと、国は4月に改正船員法を施行し、船舶所有者が事務所で船員の労働時間の状況を把握し、記録簿への記載とそれらを管理する労務管理責任者の専任などを義務付けた。陸上の労働者に比べて遅れる船員の働き方改革に乗り出した。こうした取り組みが若者の定着率向上に寄与することを期待したい。

船員の働き方改革を着実に進めるには、中小企業が大半の内航海運各社の事業基盤強化も不可欠だ。折からの燃料費高騰も経営を直撃する。大手企業が多い荷主側も内航海運存続のため、法令順守への協力や契約の適正化、適切な運賃の支払いなどの配慮を求めたい。

(2022/8/30 05:00)

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