社説/迫る「物流24年問題」(上) 企業間連携と多様な輸送さらに

(2024/3/27 05:00)

ドライバー不足と輸送力の低下が懸念される「物流の2024年問題」が4月1日に迫る。共同配送など企業間の連携による物流の効率化や、モーダルシフトといった物流手段の多様化により、輸送能力の確保と脱炭素を同時並行で推進したい。物流業界は「不合理な商慣習」を解消することでドライバーへの持続的な賃上げを実現し、他業態との所得格差を是正したい。

4月から自動車運転業務の時間外労働時間に年960時間の上限が設けられる。長期間労働が是正される一方、収入減がドライバー不足に拍車をかけかねない。対策を講じなければ輸送能力は24年度に14%不足する。

政府はドライバーの処遇改善を進める。すでに運賃水準の目安「標準的な運賃」を平均約8%引き上げており、「不合理な商慣習」を見直すことで24年度に10%の賃上げは可能とみる。不合理な商慣習とは、運転手による長時間の荷待ちや、荷主が運転手に無償で荷物の積み下ろし(荷役)を要請すること。政府は24年度に荷役に新たな価格体系を設ける。荷主には十分な理解と全面協力を求めたい。

政府は、運転手の荷待ちや荷役時間を30年度までに1人当たり年125時間削減、宅配などの再配達率を「置き配」で6%に半減させる目標を掲げる。政府は自動倉庫や無人フォークリフトなどへの投資も支援し、24年問題を軟着陸させたい。

産業界は24年問題に備え、物流効率化に動いている。大王製紙と日本製紙は23年8月から海上共同輸送を開始。日本郵便はヤマト運輸の小型・薄型の荷物を配送するサービスを2月に始めた。ローソンも4月6日からワタミが製造した弁当などを同社の営業所に届ける協業に乗り出す。物流効率化は脱炭素化にもつながるだけに、企業間連携の一段の広がりが期待される。

24年問題を物流手段の多様化への好機とも捉えたい。JR東日本とJR貨物は、新幹線による高速・多量荷物輸送を試行している。高速道路や地下を利用した自動物流道路、飛行ロボット(ドローン)など、次世代技術の早期実用化も目指したい。

(2024/3/27 05:00)

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