社説/大企業発スタートアップ 社内で埋もれた技術の事業化を

(2024/5/23 05:00)

大企業が事業化できなかった技術の6割がそのまま消滅しているという。この技術を大企業から切り離し、新設したスタートアップが新たな価値を創出できないだろうか。経済産業省は「スタートアップ創出型カーブアウト」のガイダンス(手引書)を初めてまとめた。競争力のある新産業創出やイノベーションを促す効果に期待したい。

カーブアウトは「切り出す」の意味。大企業から切り離した技術を新設のスタートアップに移し、事業化を目指す。ガイダンスによると、民間部門の研究開発投資の約9割を大企業で占めるが、実用化に至らない場合も。新たな価値創出につながる技術が数多く蓄積されている可能性がある。埋もれていた技術が、スタートアップの迅速な意志決定や柔軟な研究開発により日の目を見ると期待される。

ガイダンスは、スタートアップの独立性を維持し、起業家が主導する重要性を説く。スタートアップへの出資はベンチャーキャピタル(VC)が担い、大企業が出資する場合は少額とするよう助言。大企業は関連する経営資源(技術や知的財産、人材など)をスタートアップに提供し、人事制度もスタートアップ側に委任する。スタートアップの経営は、社内起業家や外部の起業家を想定している。

大企業の企業価値の向上にもつながるという。大企業と相性の良いプロダクトが開発される可能性があり、将来の有効な提携相手になり得る。スタートアップに提供した知的財産の対価として一定の株式を取得すれば直接的な経済的利益も期待できる。無形資産経営の一環として活用が広がると期待したい。

ガイダンスによると、大学発スタートアップが2022年度に3782社に達するの対し、企業発は169社にとどまっている。大企業にはスタートアップの一層の創出が求められる。

日本経済はイノベーションにより社会課題と経済成長を両立させ、コストカットの縮小均衡から拡大均衡の経済へと転換する過渡期にある。大企業とスタートアップの機動力を融合し、この転換に弾みを付けたい。

(2024/5/23 05:00)

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