[ オピニオン ]
(2016/5/13 05:00)
熊本県を襲った最初の震度7の強い揺れからあすで1カ月。九州は地震が少ないという漠然とした認識をぬぐい去り、日本のどの地方にも大地震の危険があるという現実を突きつけた。被災地外の企業も熊本地震の教訓を取り入れ、事業継続計画(BCP)を見直して大地震に備えてほしい。
我々は大規模災害のたびに”想定外の事態“に直面する。熊本地震で想定外だったのは震度7の強い揺れが2度にわたり発生したことだ。内部を損傷しつつも最初の地震に耐えた家屋が、本震とされる4月16日の強い揺れで倒壊して多くの住民の命を奪った。その後、さらに強い地震が起きるのではないかという不安が救援や復旧作業の進捗(しんちょく)を妨げた。
製造現場でも、強い揺れが連続したため建物と設備の両方が著しく損壊し、操業再開に時間がかかっているケースがあるようだ。モノづくりの復旧支援は企業ごとに状況を把握し、適切な支援策が必要となる。
東日本大震災では津波で建物と設備すべてが流失した事業者が多かった。中小企業基盤整備機構が仮設工場を整備して自治体を通じて無償で貸し出す一方、中小企業がグループをつくって復興計画を策定した場合に施設などの整備資金を補助する措置を講じている。
熊本地震の場合、強い揺れの繰り返しがもたらした事業所の被害に合わせた支援がひとつのポイントとなろう。そのためにも国や自治体、地域団体がしっかりと現地企業の状況を把握してもらいたい。
被災地以外の企業は、強い揺れが繰り返し起こる地震への備えを検討し、自社のBCPに反映させなければならない。余震が長く続き、復旧が遅れる事態も考慮が必要だ。
また今後は、想定外の事態が起こる可能性を考慮しなければならない。そのためには現場で柔軟に対応するための従業員の教育訓練の拡充するなど、BCPの策定、運用、改善を組織的に実施する事業継続マネジメント(BCM)を定着させることが望まれる。
(2016/5/13 05:00)